〜第二章〜 海 【歌い手】２

【60】俺 ページ10

そらる side




最終確認が終わり、全員のメイクと衣装姿が揃った。
オシャレな甚平に、浴衣。

ピースは甚平。意外だけど顔が関西よりだし似合ってる。



｢こんな洋風な甚平あるんやな｣

『センラさん…！めっちゃかっこいいっすね』

｢お前もな｣

｢ほら！ピース円陣組むよ！！掛け声よろしくね！！｣



バシ！！っとピースの背中を叩くまふは、浮かれている。珍しく緊張もしてないみたいだし、まふにつられて皆、いつもより緊張していないように見える。

まふの肩に腕を組み、反対の腕をセンラの肩に回す。



｢ちょ、ピースくすぐんなよwwwww｣

『めいちゃん効くんだ。へぇ』

｢んだよその目は｣



なんやかんやでこの、ライブが始まる前のこの空間が好きだったりもする。





『今日のテーマはどんちゃん騒ぎ！全力で馬鹿になりましょう！！絶対成功させるぞ！！』


｢｢｢｢｢｢｢｢｢｢おー！！！！！｣｣｣｣｣｣｣｣｣｣



ピースの声で円陣が決まる。
全員がハイタッチをし、それぞれの位置につき始める。

しかし、ピースだけはまだその場を動かない。

離れた振りをして見守っていると彼はぐっと伸びをしてふーっと息を吐き出した。







『…っし、後悔してもなんにもなんねぇ…』





『片目だけの景色を楽しんでやる、俺のやり方で』






いつも、みんなの前では“僕”と言っていたのに
知らぬ間に…




『バレバレですよ、そらるさん』



くるっと回って俺を見るこいつは、少し意地悪な顔をしている。



『僕はですね、自分を奮い立たせるときだけ、心を鬼にするんです』



ふわりと笑うと、ピースは『では、楽しみましょう』とまふまふの後を追って駆け出した。


その後ろ姿を見て思い出した。
ピースが初めてひきフェスに出た日、彼を見て思った事を。




主人公みたいじゃない
あいつは、誰よりも主人公だ

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