【54】店名:柘榴 ページ4
まふまふ side
Aくんの食べたいものは、彼が初めてライブに出た時の打ち上げをした居酒屋【柘榴】だった。
少し路地を入ったところにあり、穴場のため僕ら歌い手と菅田くんを始めとする芸能人一部のみが訪れるちょっと特別な場所だ。
『はるくん…?』
二階に上がろうと靴を脱ぐと、なにかの撮影の打ち上げだろうか。僕でもわかる有名な俳優さんたちと呑んでいる後ろ姿の男性を見てそう呟いた。
『ちょ、ちょっと声掛けてきます』
「おい、!」
そらるさんが止めようと手を伸ばしたものの、Aの歩くスピードの方が速かった。
恐る恐る、Aの行動を見守る。
「あれ、君どうした…って、菅田くんのとこの弟さんじゃん!」
『は、はじめまして!菅生Aと言います、あの、はるくんに声掛けたくて…』
「おkおk。おーい!春馬!!」
Aが有名人が知る有名人だ…とか変な考えを巡らせる。
「どうしました…って、あ」
『あ、じゃないよ。なんでメール見ないんですか?僕めっちゃ心配だったんですけど』
「ほんとごめん、忙しくて見れなくて埋もれちゃってたかも」
『それは仕方ないですけど…元気?』
「うん、元気。Aくんは?もうお腹弱いのは治った?」
『いつの話してんの…』
そのあとも少し話しているみたいだった。
「活動のこと賢人くんから聞いて音楽聴いてるし、CDも買ったよ」とか「ライブ今度行きたいんだけどチケット取れるかな」とか。
けど、なんだか他人の僕からみた“三浦春馬”さんは、なんだか切なげですぐに崩れてしまう塔のように見えた。
そのあとAは三浦さんとメールからLINEに連絡を変えるための交換をして別れ際にちょっと言葉を交わしてからAは戻ってきた。
『ごめんなさい、お誘い頂いているの僕なのに』
「ううん。それより三浦さんとどんな関係?」
『にーちゃんの活動当初から良くしていただいてて。近所のお兄ちゃん…みたいな』
「お前の周り有名人しか居ないな。怖いんだけど」
『業界が近ければこんなもんですよ』
少し切なげに笑う彼がとても遠く感じる。
有名になってくれるのはライバルとしてとても嬉しいのに、心にあるモヤの正体は、きっと弟のような彼に、先輩だぞ!という背中を見せられなくなるのが怖いからだと思う。
「ほら、上行くぞ」
「は、はい!」
僕が頭を撫でると、Aが微笑んだ。
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雨音 uto(プロフ) - なーなー。さん» 上から目線でしたら申し訳ありません。 (2020年10月29日 22時) (レス) id: 975f6eaeb1 (このIDを非表示/違反報告)
雨音 uto(プロフ) - なーなー。さん» 何を認めるかは自分次第ですが、どんな所でもいいです。強いところ、弱いところ、得意なこと。自分にスポットライトを当ててみてください。人は誰しも違い、違う心の素顔を持っています。これから先、なーなーさんの素顔が無いものにならないように。 (2020年10月29日 22時) (レス) id: 975f6eaeb1 (このIDを非表示/違反報告)
雨音 uto(プロフ) - なーなー。さん» コメント、ありがとうございます。これはただの私の独り言なのですが、人は色々な場面で違う仮面を被っている生き物だと思います。親の前、先生の前、友達の前。少しだけ、分厚いものでなく薄い仮面にしてみてはいかがでしょうか。少しだけ、自分を認めて上げてください (2020年10月29日 22時) (レス) id: 975f6eaeb1 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー。 - 一気読みさせていただきました。不登校でもいじめにあっているわけでもないものの、貼り付けた仮面で過ごしている自分にとって音楽は心の支えです。主人公と作者さんの前向きに努力する姿を見て自分も頑張らないとと思いました。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年10月29日 22時) (レス) id: 3485a9157f (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - 雨音 utoさん» ありがとうございます!外伝に是非起用しますね! (2020年10月15日 11時) (レス) id: 5447677fd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 x他1人 | 作成日時:2020年9月24日 0時