【62】夏 ページ12
まふまふ side
全員がステージに揃うと一度会場の明かりが消え、音楽も止まる。すると会場に響いたのはヒューという音。その後だった
パンッ…
儚く散る花火の音。それと同時に会場にギター音とドラム音が響き渡る。
作詞作曲After the Rain書き下ろしのこのライブのための曲。
その名も
「「海花火」」
儚く散っていく花火は切ない。
その花火を鏡のように映し出す海もまたザワザワと音を立て、心を揺さぶる。
その光景とピースがやけに似ているのを思い出して作ったんだ。
夏。
暑くて、汗でグシャグシャになって、「早く去ってしまえ」と思うのに、夏の終わりには「終わるな」と思う。
それがどれだけ幸せか、考えたことがあっただろうか。
風鈴の音色、公園から聞こえる子供達の楽しそうな笛のような声色に、セミの泣き声。そして聞こえるひぐらしの声は一日の終わりを告げる。
来年こそは、夏祭りにこのみんなで行けたらいいな。
『最高の景色ですね!!』
目を輝かせる君が、どこが儚い。
でも、その言葉また言わせてあげるから
僕の可愛い後輩で、これからも居てください。
夜は、これからも続く。
━━━━━━━━━━━━━━━
No side
30分の休憩が終わった頃。
真っ暗なステージに、一脚の椅子とギターが置かれた。
その椅子に腰かけるピース。
目の前に置かれるマイクのスイッチを入れ、彼はギターを手に持つと弦を弾いた。
『休憩はここまで。つかぬ曲になりますが、一曲。僕が初めて作った曲です。聞いてください。Bullying』
ざわついていた会場が一気に静寂に包まれる。
まるで、深夜の海岸みたいだった。
『ありがとうございました』
彼がそう頭を下げると切なげな拍手が彼を包み、すすり泣く声も聞こえ、ピースはマイクを外し、ぎゅっと握ると息を吸い込み一言、語りかけた。
『変わるためには、動くしかない』
『だから、変わりたいと思うなら、僕の曲を聴いて立ち上がってください』
泣いていた人達の顔が彼を向く。
『音楽が、絶対に傍に居てくれるから』
ふわりと彼が微笑むと、何事も無かったかのように華やかな音楽が会場を包み込んだ。
「ありがとう、ピースさん」
会場の誰かが、そう呟いた。
272人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨音 uto(プロフ) - なーなー。さん» 上から目線でしたら申し訳ありません。 (2020年10月29日 22時) (レス) id: 975f6eaeb1 (このIDを非表示/違反報告)
雨音 uto(プロフ) - なーなー。さん» 何を認めるかは自分次第ですが、どんな所でもいいです。強いところ、弱いところ、得意なこと。自分にスポットライトを当ててみてください。人は誰しも違い、違う心の素顔を持っています。これから先、なーなーさんの素顔が無いものにならないように。 (2020年10月29日 22時) (レス) id: 975f6eaeb1 (このIDを非表示/違反報告)
雨音 uto(プロフ) - なーなー。さん» コメント、ありがとうございます。これはただの私の独り言なのですが、人は色々な場面で違う仮面を被っている生き物だと思います。親の前、先生の前、友達の前。少しだけ、分厚いものでなく薄い仮面にしてみてはいかがでしょうか。少しだけ、自分を認めて上げてください (2020年10月29日 22時) (レス) id: 975f6eaeb1 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー。 - 一気読みさせていただきました。不登校でもいじめにあっているわけでもないものの、貼り付けた仮面で過ごしている自分にとって音楽は心の支えです。主人公と作者さんの前向きに努力する姿を見て自分も頑張らないとと思いました。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年10月29日 22時) (レス) id: 3485a9157f (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - 雨音 utoさん» ありがとうございます!外伝に是非起用しますね! (2020年10月15日 11時) (レス) id: 5447677fd3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨音 x他1人 | 作成日時:2020年9月24日 0時