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(you-side)
西「詩、こっち見て」
頭上から聴こえるにっしーの声に、私は顔を伏せたまま首を横に振る。
西「俺の目を見て」
「っ」
優しく言ってくれているのに。
変に意固地になってしまった私は、素直にはいとは言えなくて。
にっしーの顔を、見ることができない。
西「……分かった」
「……」
西「もういいよ」
その言葉と共に、彼の気配が離れていく。
「っ…、」
西「じゃあ俺、行くから。ごめんな」
離れていく後ろ姿。
今更になって私は右手を伸ばすけれど。
「…っあ……、」
肝心の、言葉が出ない。
扉の開く音がして、にっしーが出ていってしまうのに。
──行かないで
たった5文字の、その言葉が言えない。
1人になった部屋で、私は暫く扉を見つめて、諦めたように視線を前に移した。
目を閉じると、そこから涙が溢れ出して。
──馬鹿、
──素直になれない私の、馬鹿
──これで、良かったんだ
悲しくて、胸が痛んで仕方ないのに。
これで、にっしーは自由になれるという安堵もある。
「っ……、ふ………ぅ」
今になって、正直な涙は止まらない。
──泣いても、
──泣いても、もうにっしーは戻ってこないのに
.
西「意地っ張り」
「……え…………?」
フワリと、私の両頬を冷たい手が覆う。
驚いて目を開けると、そこには。
西「そんな、全力で俺が好きだって顔しといて……嘘吐いてんじゃねーよ」
怒ってるような、拗ねてるような。
それでいて、何処か愉しそうに口角を上げたにっしーが、まっすぐに私を見ていた。
「に、」
西「もういいや。言葉より、先に身体に聞く」
もし嫌なら拒んで。
そう続けられた言葉を聞けば、もう抵抗なんて出来なくて。
降りてきたにっしーの口付けは、少し冷たくて、柔らかかった。
「好き……、」
西「うん」
「好き……っ」
西「うん、俺も好き」
泣きながら言えば、にっしーは優しく笑って頷いてくれる。
「どうして、」
西「何が?」
「どうして……私を、好きでいてくれるの…?」
好いてくれるどころか、嫌われたって不思議じゃないのに。
嗚咽が漏れる私を、少し強引に抱き寄せたにっしー。
西「そんな簡単に諦められるくらいなら、ここまで片想い拗らせてないし」
ま、危うく諦めかけたけど。
そう言うにっしーの心音が、心地よく響く。
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海(プロフ) - 海音さん» ありがとうございます!次章もマイペースに更新していきたいと思っておりますので、またよろしくお願い致します! (2020年2月20日 20時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
海音(プロフ) - 楽しく読ませて頂いてます!すごく面白いです!!次の章も楽しみです!これからも頑張ってください!! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8f38073b2c (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - ゆうさん» かなり長かったと思うのですが、ありがとうございます!マイペースな展開と更新になりますが、これからも頑張って参りますので、お付き合い頂ければ嬉しいです! (2019年12月14日 18時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 最初から一気に読んじゃいました!笑 とっても面白かったです! これからも頑張ってください! (2019年12月14日 16時) (レス) id: 3d09ff0bd0 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - EYさん» ありがとうございます!ゆっくりで良いとお気遣いまでして頂き、本当に嬉しいです。マイペースに頑張って参りますので、これからもよろしくお願い致します! (2019年11月18日 20時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2019年11月9日 18時