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(youーside)
沢「私は君が小さな頃から知ってるが…相変わらず天才的な歌声だったね」
そう言われた時、私は事前にされていた忠告を思い出す。
美『今回のゲスト公演は、私のお爺様が指名したものですが、詩さんを陥れるつもりです』
この話が来た時、美織さんが教えてくれた。
美『詩さんがAAAメンバーとして成功していること、お恥ずかしながらお爺様は気に入らないらしくて……舞台で恥をかかせてやろう。くらいには考えていると思います』
『沢本、さんですか…』
美『幸いお仕事がお忙しいと断ることはできると思います。無理に出演する必要はありません』
美織さんが私を認めてくれていること、心配してくれていることは嬉しかった。
私にとって声楽の舞台は、良い思い出ばかりではなくて。
美織さんの言う通り、断ることだって出来た。
ーーでも、
「沢本さんにそう言って頂けるなんて、とても光栄です」
沢「謙遜することはない。何せ、かつての声楽界で行われていた公演、大会では賞を独占するほどだったのだから」
それでも出演を決めたのは、単純にこのまま逃げるのはもっと悔しかったから。
まっすぐではなかった。
間違いも沢山してしまった。
でも、私なりに音楽と共に生きてきた。
沢「いやあ、ね。かつてあんな事件を起こしていても、実力さえあれば再びこのような場で歌える。君が身をもって証明してくれたね」
凍りついた会場の空気。
ふと客席に目を移せば。
力強い眼差しで私を見つめる美織さん。
自分の事のように泣きそうになっている実彩子。
ここからでも分かるくらい、怒りに堪えている秀太。
心配そうに、だけど私と目を合わせて小さく頷いたお母さん。
ーー大丈夫、
「私は天才と呼べるような人間ではありません」
沢「何を今更、」
ーー大丈夫
ーー私は、1人じゃない
「歌は…その人の歌声は、その人の心を表します」
ちゃんと向き合える。
何も恐れることはない。
「私はかつて、自分の悲しみ、寂しさ、怒り、憎しみ……全ての負の感情を込めて歌いました」
客席を見渡して。
「それで、自分の欲しいものが手に入ると思ったんです」
沢本さんに視線を合わせる。
「そんな負の感情で、自分が伝えたいことが真っ直ぐに伝わるはずもなかったのに」
これが、私の罪。
「そんな簡単な事も分からないほど私は子どもでした」
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海(プロフ) - 海音さん» ありがとうございます!次章もマイペースに更新していきたいと思っておりますので、またよろしくお願い致します! (2020年2月20日 20時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
海音(プロフ) - 楽しく読ませて頂いてます!すごく面白いです!!次の章も楽しみです!これからも頑張ってください!! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8f38073b2c (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - ゆうさん» かなり長かったと思うのですが、ありがとうございます!マイペースな展開と更新になりますが、これからも頑張って参りますので、お付き合い頂ければ嬉しいです! (2019年12月14日 18時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 最初から一気に読んじゃいました!笑 とっても面白かったです! これからも頑張ってください! (2019年12月14日 16時) (レス) id: 3d09ff0bd0 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - EYさん» ありがとうございます!ゆっくりで良いとお気遣いまでして頂き、本当に嬉しいです。マイペースに頑張って参りますので、これからもよろしくお願い致します! (2019年11月18日 20時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2019年11月9日 18時