35 ページ36
(you-side)
お医者さんから聞いた話では、もういつ限界が来てもおかしくないという話で。
その次の日、おば様は眠るように息を引き取った。
葬式が終わって、仕事の合間をぬって私は慌ただしくも引っ越しを行った。
生前の遺書で、高倉家の自宅は私に任せるとあって、悩んだ結果、住むことにして。
引っ越しが一段落して、懐かしく感じるリビングで一人椅子に腰掛けると、重い息を１つ溢した。
「……」
何をする気も起こらず、ただボーッと時間だけが過ぎていく。
……おば様が亡くなってから、涙は一切出ていなくて。
ただ、おば様がいなくなってしまったら、私は本当に独りぼっちなのだと感じた。
端から見れば、本当の母親がいるじゃないかという話なのだけれど、生憎彼女は私を娘だとは認識していない。
──虚しい
つい口に出した一言は誰にも届かなくて。
静まり返った部屋が、とても広く感じた。
.
それからまた、仕事で忙しい日々を過ごしていて。
いよいよソロツアーも始まった。
「こんばんは、綾瀬詩です！」
挨拶をすれば、踊れば、歌い始めれば、ギターを弾けば。
高まる胸の鼓動と、上がる会場のボルテージ。
目の前に見えるファンの皆の表情はキラキラと輝いていて。
嬉しいと思う同時に、絶対に失望させたくないと思った。
楽しいことに嘘はない。
歌うのは大好きだし、特にソロライブではストリート時代の歌も久々に歌えるから。
……だけど、心の片隅で思う。
──これ以上、大切なものを失いたくない
「今日はありがとうございました！！」
「あやちゃーん！！」
「詩ー！！」
舞台から捌けても、暫くは聞こえてくる歓声と拍手に、どうしようもなく安堵して。
──大丈夫、私の居場所はちゃんとある
ライブが終わって最初に抱いた感想は、情けなくもそんな事。
携帯を見れば、メンバーからもお疲れ様とメッセージが来ていて、また安心して。
──私には、皆がいる
まるで自分に言い聞かせるように、心の中で強く思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 259人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海(プロフ) - めいさん» 連載を始めてからかなり長くなりますが、ずっとお付き合いして下さりありがとうございます！お待たせしてしまい、すみません…。明日の夜頃に続編を出したいと思っておりますので、またよろしくお願い致します！！ (2019年3月23日 22時) (
レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
めい - こんにちは！このシリーズがではじめてからずっと読んでます！続きが気になりすぎて来る度に毎回読み直してます！お忙しいかもしれませんが更新楽しみに待っています！ (2019年3月22日 16時) (レス) id: 9ffa7d3de5 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - きこさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます(ToT)マイペースですが、楽しんで読んでいただけるようこれからも頑張ります！ (2018年12月29日 10時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - ららさん» その予定ではありますが、何しろ私のお話は驚くほど展開がゆっくりなので、まだまだお話は長くなる予定です。様々な波乱も起きつつ、マイペースに進んで参りますので、お付き合い頂ければ幸いです！ (2018年12月29日 10時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
きこ - このお話1番好きです！これからも頑張ってください！ (2018年12月27日 22時) (レス) id: 5d0b75568f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海 | 作成日時：2018年12月9日 21時
