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(ito-side)
顔色が悪い詩を連れて、私達は外に出る。
人通りのない、会場の裏側。
壁にもたれ掛かって、私は静かに聞いた。
伊「詩、朝ドラの撮影はもう終わったの？」
「え？…うん」
あまり関係ないことを口にしたからか、少しキョトンとした詩。
「ついこの間、放送も終わったしね」
伊「あ、そっか。ビデオ撮りためてるから気付いてなかった」
「でも、外伝みたいなのやるんだって。だから、後数回は撮影があるみたい」
伊「そうなんだ」
その様子は少し楽しそうで。
私の見慣れない、女優の顔をしていた。
伊「……にっしー、さ」
「分かってる」
小さく声をあげた私に、詩は遮るように言う。
「にっしーのは、いつもの事だから。分かってるよ」
伊「うん、」
「ごめんね。……ちゃんと、歌わないとって…思うんだけど」
伊「何か、あったの？」
あの詩が歌えなくなるなんて、この目で見ても未だに信じがたくて。
動揺したように視線を泳がせた詩に、言葉を重ねる。
伊「リーダー、……それとも沢本さん？」
何となく、そこが理由なのかなって。
詳しいことは分からないままに聞くと、詩は小さく首を横に振る。
「私のせいだよ」
伊「何で？」
「……千晃は、歌うのが嫌になったことってある？」
不意討ちの質問に思わず黙り込む。
そんな私を数秒を見つめて、詩は小さく笑った。
「私は、あるよ。昔、歌が嫌いで嫌いで…憎くて堪らなかった」
初めて見る、詩の顔だった。
「あの記事……沢本さんが書いた記事、全部本当の事なの。コンクールで、課題曲とは関係ない歌を歌って失格になった」
遠くを見て目を細める詩は、私がよく知るいつもの穏やかな彼女じゃない。
「あの時、私……家族に自分だけを見てほしかった。それは事実だけど、」
自嘲気味に笑って、言葉は続く。
「全部、全部壊れたって構わないって。心の何処かで思ってた」
当時の事を、私はよく知らない。
記事を読む限り、詩は只寂しかっただけなんじゃないかなって、そう思ってた。
「今でも時々、不意にそう思う事がある」
そう言う詩の横顔は、感情が一切消えた無表情で。
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海(プロフ) - めいさん» 連載を始めてからかなり長くなりますが、ずっとお付き合いして下さりありがとうございます！お待たせしてしまい、すみません…。明日の夜頃に続編を出したいと思っておりますので、またよろしくお願い致します！！ (2019年3月23日 22時) (
レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
めい - こんにちは！このシリーズがではじめてからずっと読んでます！続きが気になりすぎて来る度に毎回読み直してます！お忙しいかもしれませんが更新楽しみに待っています！ (2019年3月22日 16時) (レス) id: 9ffa7d3de5 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - きこさん» 勿体ないお言葉をありがとうございます(ToT)マイペースですが、楽しんで読んでいただけるようこれからも頑張ります！ (2018年12月29日 10時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - ららさん» その予定ではありますが、何しろ私のお話は驚くほど展開がゆっくりなので、まだまだお話は長くなる予定です。様々な波乱も起きつつ、マイペースに進んで参りますので、お付き合い頂ければ幸いです！ (2018年12月29日 10時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
きこ - このお話1番好きです！これからも頑張ってください！ (2018年12月27日 22時) (レス) id: 5d0b75568f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海 | 作成日時：2018年12月9日 21時
