検索窓
今日:9 hit、昨日:14 hit、合計:21,144 hit

鬼の居ぬ間のなんとやら 2 ページ22

「どうして助けてくれたんですか」
「なんの事だ」

夕焼けの光が夜桜埠頭に差し込み、約束の丑の刻へと近づいているのがわかった。
目と鼻を赤くした私は洞潔に監視されている中特に何も出来ないのでコンテナに背を預けて座っていた。
その隣で同じように背を預ける洞潔に声をかけると、そう素っ気なく返された。

「言っただろう。次会った時は敵だと」
「まあ、そうですね」

現時点でこう攫われているので仲間だと敵だという話をするのは野暮なことだった。
ずずっと鼻をすすって洞潔を見るがやっぱり洞潔の目はこちらには向いていなかった。

「私を人質にした所で確実に妖聖剣を奪えるとは思わないことですね」
「ほう?」

少し挑発的に言うと珍しく洞潔はニヤリと笑って鋭い歯を見せ私を見下した。
まさか洞潔がこんな人間の挑発に乗るとは思ってなかったので内心少し焦った。

「大した自身だな?俺や酒呑童子様が人間に負かされるとでも?」
「や、やってみなきゃわかりませんよ?妖聖剣は私たちが持ってるんですから」

ギロ、と黄昏に光る眼に睨まれて身が竦む思いをしたが必死に虚勢を張った。
すると突然ガッと右手を掴まれた。
まるであの時と同じように冷たい目で見下されて冷や汗が伝った。

「醜い虚勢だな。人間は腕を無くしたら生きていけないそうだが、多少の指なら問題ないそうだな」
「!!」

指とか腕とかそういう問題ではない!
洞潔がぐっと力を込めるのを感じて痛みに耐えようと目を閉じた。
が、返ってきたのは痛みではなくふっと聞こえた洞潔の鼻で笑う音だった。
右手を離され、恐る恐る目を開けるとそこには至極愉悦だという顔でニヤニヤ笑う洞潔がいた。

「あ、遊びましたね!?」
「怯えるなら最初から従順でいればいいものを」

つまりこの妖怪私が安い挑発をしたのを利用してまた脅したりして私の反応を楽しんでいたわけだ。
はあーっとため息を着くと洞潔はクツクツと喉で笑った。

「鬼の趣味悪い…」
「鬼だからな」

いつの間にか鼻水も止まっていた。
すっかり暗くなってきた空に、私はふと思い出した。

「洞潔さん」
「なんだ」
「お腹が空きました」

お腹を抑えて言うと洞潔は心底呆れた顔でこちらを見た。
しかしこちらはお昼も食べてないのに人質にされたのだ。そこら辺の責任は取っていただきたい。

「…逃げるなよ」
「了解です」

敬礼と共に返すとため息と共に洞潔はどこかに姿を消した。
私はちら、と足元の影を見て再びコンテナに背を預けた。

姫はそこにいる 4→←鬼の居ぬ間のなんとやら



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
54人がお気に入り
設定タグ:妖怪ウォッチ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

優(東方ガチ勢) - 凄く面白いです!ケースケの立ち位置に夢主を入れるのは考えたことがなかったです(笑)とても面白いしいい話なので、続きが出来たら更新して欲しいです! (2022年8月3日 15時) (レス) @page37 id: 14abcb2f13 (このIDを非表示/違反報告)
名無 - とても面白かったです。続きがあれば何時までも楽しみにしています。 (2021年3月23日 9時) (レス) id: cdf16b300a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:フォンフォン | 作成日時:2020年10月12日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。