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(youーside)
伊「やー、早いねー」
「ねぇー」
ドーム公演最終日、東京。
いよいよ終わってしまうのが寂しくて、誰よりも早く来たつもりだったけれど、千晃も同じ事を考えていたらしく。
2人揃ってステージに腰掛けて、客席を眺める。
伊「いつもはさ、4公演目くらいでやっと慣れてきて…ってとこだけど、今回はこれで終わりだもんね」
「ね。本当に夢みたいな時間だったなぁ」
まだ終わってはいないけど、本当にあっという間だった。
伊「初めは2、3人のお客さんしかいなかったのに、こーんなに大きな舞台に立てるなんて思ってなかったなぁ」
AAAとしてではないけど、思い出すのは私もストリートの時。
ギターを持って歌う私を、煩わしい目で見る人も多かった。
あの時から考えれば、今は信じられないくらい多くの人が、私達の事を愛してくれていて。
ーー失いたくない
ーー大事だから、
ーー大切にしたいから
頼りになるスタッフと。
大切なファンと。
そして、大好きな7人のメンバーと。
これからもこの8人で、歩んでいきたい。
ずっと、ずっと。
「そろそろ楽屋行く?」
「そだね。誰か来てるかも」
よし、と立ち上がったその時だった。
ーープチン、
そんな音がした気がした。
「え…?」
目線を下に向ければ、落ちたソレが目に入って。
「…嘘、」
伊「どうしたの?」
しゃがんで拾い上げれば、千晃の目にも映ったらしくて。
伊「それって、ずっと大切にしていたミサンガだよね」
「……うん」
橙、紫、緑、黄、青、桃、赤が白の上に重ねられていて。
当時、メンバーカラーなんて無かったのにと不思議に思った事もある。
陽斗がくれた大切なミサンガが見事に切れてしまっていた。
「……」
伊「あ…でも、ミサンガが切れたら願いが叶うって言うよね!」
呆然と言葉を無くす私に、明るくそう言ってくれて。
ーー切れないで良かったの
ーーこれは、私と陽斗を繋ぐものだったから
いつも見守ってくれていたような気がしたものだったから。
まるで、また何かがすり抜けていくような。
「…そうだね。叶えば良いな」
抱いた不安を押し込めて。
切れたミサンガを、ポケットに入れた。
ーー見ててね、陽斗
そう、思いを込めて。
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海(プロフ) - ももたろうちゃんさん» ありがとうございます!凄く嬉しいです(^^)マイペースですがこれからも頑張ります!これからもよろしくお願い致します。 (2020年3月8日 17時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
ももたろうちゃん - この小説大好きです!更新頑張ってください。応援してます(*^_^*) (2020年3月8日 14時) (レス) id: 37be2dc889 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - Takatakaさん» ありがとうございます!かなり長い話になってしまっているので、そう言ってくださると嬉しいです。完結までもう少しかかりますが、丁寧に書いていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 (2020年3月7日 9時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
Takataka(プロフ) - まだまだ続けくのは嬉しいです、更新楽しみにしてます (2020年3月6日 14時) (レス) id: 46a14b564f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2020年3月5日 20時