33 ページ34
(ayase-side)
以前、私の喉はそこまで強くないと診断を受けてから、定期的に診てもらっている私は、その日も桜子先生の元を訪れていた。
「問題ないわね」
詩「ありがとうございます」
「あ、そうだ詩さん」
此方を向いた桜子先生の眼差しは、前のような柔らかさはなくて、何処か虚無なところがある。
……桜子先生とだっちゃんが別れた事は、だっちゃん本人から聞いていた。
感情なく報告だけしてきた彼に、私もメンバーも何も言えなくて、それ以上は突っ込めなかったのだけれど。
「突然だけど、来週からアメリカに異動する事になったの」
詩「……え？」
「勿論詩さんの事は別の医師に引き継ぐつもりだから、心配しないで」
淡々と告げた桜子先生は無表情で。
詩「あの、桜子先生」
私が口を挟む事じゃないと分かってはいても、放っておけなかった。
詩「……アメリカへの異動は、だっちゃんと別れたからじゃないですよね？」
自分の仕事の為なら良い。
でも、自棄になってしまっているのだとしたら。
『俺、別れたから』
あんなにも沈んだ彼と、すれ違いになったまま終わってほしくなくて。
「彼はもう、関係ないわ」
詩「桜子先生、何だか変です。まるで…」
「私には人を愛する資格なんて、ないから」
無表情で。
きっぱりと言い切る桜子先生に、思わず絶句して。
彼女に私がこれ以上何を言っても、何も届かないのだと察した。
「じゃあ、来月からは申し訳ないのだけれどお願いね」
詩「……はい」
その場はもう只頷く事しかできず、診察室を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海(プロフ) - ハナリーンさん» ありがとうございます！黄色さんは勿論、九条先生も格好いい女性を目指してたので、嬉しいです。キュンキュンして頂けたのなら本当に幸いです！閲覧してくださり、ありがとうございました！！ (2018年11月26日 19時) (
レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
ハナリーン(プロフ) - 九条先生もだっちゃんもすっごくかっこよかったです。キュンキュンしました！ (2018年11月23日 1時) (レス) id: 33cb9575e2 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - みどりまんさん» ありがとうございます！私の書く日高くんや終わり方を気に入って頂けて…嬉しいです！みつみさの電話は私もお気に入りなんです(笑)電話相手は誰にするか悩んだんですが、私の推しに出てもらいました(笑)ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました！！ (2018年8月25日 19時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
みどりまん(プロフ) - 完結お疲れ様です！！一途な日高君、本当に読んでいて涙が出るくらい好きでした！終わり方が本当に素敵で素敵で、仕方ないです！！個人的には、最後のみつみさの電話の宇野ちゃんの一言がたまらなく好きです笑お疲れさまでした！ (2018年8月25日 11時) (レス) id: 62c1352e89 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - オーバーさん» ありがとうございます！私も一夜あけて、絶賛dramaロスです(笑)まだ詳細は決まってなく時期も未定ですが、いつか短編集でこっそり番外編を書けたらと思ってますので、ご縁があればそこでもお会いできたらなと思います。執筆中も激励を下さり、ありがとうございました！ (2018年8月25日 10時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海 | 作成日時：2018年6月28日 19時
