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(youーside)
どれだけ強気に出ても、内心では焦りと恐怖でいっぱいで。
ーーどうしよう
ーー歌えなくなったら、仕事にならない
ーーAAAメンバーが歌えないなんて、有り得ない
こんなこと、誰にも言えなくて。
考えても、考えようとしても答えも出なくて。
アリーナツアーの打ち合わせでも、平静を装うのに必死だった。
何かに勘付いた様にも見えた隆弘にも相談できなくて。
ーーバレちゃいけない
ーー何とか、何とかしなくちゃ
どうにもできないと分かっていても、そう思わずにはいられない。
気付けば3月31日。
今日は千晃が卒業する日だと気付いて。
伊『AAAを守って』
千晃の言葉を思い出して、呼吸が詰まった。
ーー守るって?
ーー歌えなくなる私が、どうしてAAAを守れるの?
歌は私にとって全てで。
確かに歌わない時期もあったけど、今度こそ一生歌っていこうと決めたから。
歌えなくなる時がやってくるなんて、考えたこともなかった。
ただでさえグループにとって重要な時期。
7人体制になって、これから頑張らなきゃっていう時に。
ーーどうして私は、
怒り、悲しみ、焦燥、恐れ。
どこにぶつければ良いのかも、どうやって治めれば良いのかも分からない感情に押し潰されそうになって。
気付けば私は、その日の仕事をキャンセルして逃げ出した。
.
隆弘にも、メンバーにも会えない。
お母さんの顔も見れない。
私に行き場所なんてあるはずもない。
だけど、家に1人でいたくもない。
そんな私が縋れたのは、高倉家のお墓だった。
何を言うわけでもなく、時間も忘れてお墓の前で佇んでいて。
ーー何も考えたくない
ーー考えられない…、
春の風に吹かれて、このまま消えてしまいそうな気さえしていた時。
西「詩」
当たり前のように私を見つけてくれたのは隆弘で。
西「何があったの」
言えないでいた私の凝り固まった心を、何よりも安心できる優しい声音に解されて。
「私…歌えなくなるんだって」
涙と共に、感情が溢れ出した。
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海(プロフ) - もえさん» 初めまして、コメントありがとうございます!またまた不穏な展開になって参りましたが、マイペースに更新していきますので、見守って頂けると嬉しいです。これからもよろしくお願い致します! (2020年7月20日 22時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
もえ - 初めまして、いきなりコメント失礼します。いつも楽しみに読ませてもらってます!主人公がこれからどうなるのか凄く気になります。これからも更新楽しみに待ってます!! (2020年7月19日 16時) (レス) id: 3ff6af9b82 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - Okymtyu1さん» ありがとうございます!マイペース更新ですが、出来る限り丁寧に書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2020年5月24日 15時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
Okymtyu1 - この小説ほんとにおもしろいです!これからも頑張ってください!! (2020年5月23日 19時) (レス) id: 5c489e2e72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2020年5月18日 22時