10 ページ11
(unoーside)
お母さんになりたい。
千晃の心からの願いに、自然と涙が頬をつたった。
ーー私が泣いたらダメだ
指で涙を拭って、千晃の肩に手を置く。
宇「なれるよ」
伊「っ」
宇「千晃の事はよく知ってる。一度決めたことを絶対に曲げない頑固な所も、それが強みだって事も知ってる」
小さい身体で、つい守ってあげたくなるような子だけど。
周りが思う以上に、ずっとずっと強いってこと。
宇「きっと、強くて優しい…そんな素敵なお母さんになれる」
伊「宇野ちゃん…」
千晃の瞳からも涙が溢れ出して。
2人でフフ、と目を合わせて笑った。
宇「仕事とか…AAAは……産休？」
暫くお休みをしたのだとしても。
いつか戻ってきた時、また走り出せるように。
待つくらいは私にだって出来るし、そうしたい。
そう、思ったけれど。
伊「私は、AAAの事も凄く大事。何年も家族以上に一緒に過ごしてきて、多分今の私にとって、1番大切なもの」
そう言う千晃の笑顔は、とても優しくて。
伊「…でも、これからはきっと……AAAが1番大切だって、自信を持って言えなくなる」
私はそこまで器用じゃないんだ。
そう言う千晃は、優しいだけじゃなくて切ない笑みを浮かべていた。
伊「私はそれが堪えられない。誰に許されても、自分が許せない」
「うん」
ーー…そっか
ーー詩はもう分かってたんだ
頷いた詩の反応と。
伊「だから私は…AAAを辞める。今までと同じように熱を注げなくなってしまう前に」
芯の通った声音に。
ーーいなくなってしまう
ーー千晃が、AAAを去ってしまう
薄々と感じていたもの。
やっと私は、その事実をゆっくりと受け入れた。
宇「…そっか」
「それが、千晃の出した答え？」
伊「…うん。今ここで話して、やっと自分でも決心できたのかも」
勝手でごめん。
続けられた言葉に、首を横に振った。
ーー尊重したい
小さいけど頼もしい、その背中が行く、選んだ道を見守りたいと。心からそう思った。
それから、私達は布団をリビングに敷いて川の字に寝転んで。
眠れる筈もない、3人で過ごす…きっと最後になる夜。
3人で涙を流して、3人で沢山思い出を語り合って、たくさん笑い合った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 426人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海(プロフ) - もえさん» 初めまして、コメントありがとうございます！またまた不穏な展開になって参りましたが、マイペースに更新していきますので、見守って頂けると嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2020年7月20日 22時) (
レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
もえ - 初めまして、いきなりコメント失礼します。いつも楽しみに読ませてもらってます！主人公がこれからどうなるのか凄く気になります。これからも更新楽しみに待ってます！！ (2020年7月19日 16時) (レス) id: 3ff6af9b82 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - Okymtyu1さん» ありがとうございます！マイペース更新ですが、出来る限り丁寧に書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします！ (2020年5月24日 15時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
Okymtyu1 - この小説ほんとにおもしろいです！これからも頑張ってください！！ (2020年5月23日 19時) (レス) id: 5c489e2e72 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海 | 作成日時：2020年5月18日 22時
