14 ページ16
(youーside)
末「本当に大丈夫？」
その大丈夫はきっと、怪我の事じゃないのは分かる。
数秒の沈黙。
きっと、私が何かに悩んでる事は完全に勘付かれてしまっただろう。
ーーでも、言えないよ
ーーこれは流石に、
「…心配してくれて、ありがとうございます」
自分の膝の上でキュッと拳を握って。
「ただ、これは私の問題だから。誰かに相談するような事じゃないんです」
ーー私の家の問題を、彼に言ったって仕方ない
「でも、秀太くんが気付いてくれた事。それは凄く嬉しいです」
末「…」
「ありがとうございます」
そう言って浮かべた笑みは、もう嘘じゃない。
末「……分かった」
ジッと私の目を見つめていた秀太くんは苦笑して頷いて。
「！」
私の拳を、優しく秀太くんの手が包み込む。
末「でもなんかあったら言って。力になるから」
「はい。その時はお願いします」
伝わる体温の温もりはとても優しくて。
ーー本当に、私には勿体無い…
私が元気を与える為に、家に来てもらってるのに。
最近は助けてもらってばかりだなぁと感じて。
「…それじゃあ、夕飯の準備に戻りますね。手当て、ありがとうございます」
末「俺もやる。一緒に作ろ」
「でも、」
口籠る私だけど、秀太くんはもう台所の方に向かっていて。
「…それじゃあ、お言葉に甘えて」
今日はいっか。
そう割り切る事にして。
2人並ぶと、いつもより少し狭く感じる台所。
だけど、いつもよりワクワクする。
ーー緊張もするけど
協力しながらりょうり進めていって。
そろそろ仕上げに入ろうかというとき。
末「あれ、ケチャップなくね」
「…あ、」
必要なものが足りなかった事に。
浮かれていた気分がサッと冷めていく。
「ご、ごめんなさい！私ったら！」
末「や。でもケチャップいるよな…近くにスーパーあったよね？買ってくるわ」
「いえ、私が行きますよ！」
末「まだそこまで遅くはない時間だけど、もう暗いし、女の子1人は危険でしょ」
「大丈夫ですよ。子どもじゃないんだし」
お互いに譲らない押し問答は暫く続いて。
末「…一緒に行くか」
「…確かにそれが折衷案ですね……でも、もしバレたら」
末「俺、あんまりマークされないから大丈夫っしょ」
これで誤魔化せる、と帽子をかぶった秀太くんは悪戯気に笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海(プロフ) - ひろさん» ありがとうございます！私自身マイペースなもので、そう言って頂けると有難いです！これからもよろしくお願い致します^_^ (2020年5月26日 20時) (
レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
ひろ - とても好きです！ゆっくりでも構わないので、更新楽しみにしてます。 (2020年5月26日 17時) (レス) id: 59db8a3c3c (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます！少し特殊な設定ですが、これからもお付き合い頂ければ嬉しいです(*^_^*) (2020年5月14日 15時) (レス) id: 37dc25736a (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - すごく素敵な作品ですね！ (2020年5月12日 15時) (レス) id: fada27738b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海 | 作成日時：2020年3月17日 22時
