4 ページ6
(you-side)
「陽斗(ハルト)」
病室の扉を開ければ、私の大好きな人───陽斗はニコリと笑う。
「詩、学校はもう終わったのか?」
「うん。7時から路上ライブだけど」
「そっか」
見に行きたかったなー、と呟く陽斗の腕には点滴が繋がれていて。
「来なくても、歌うよ?陽斗だけの為に」
痛々しいと感じる心には気づかない振りをして言えば、陽斗は変わらずに笑う。
「サンキュー。そういや、母さんがさっき来て言ってたぞ。お前が全然甘えてくれないんだーって」
「…おば様に迷惑かけ続けるわけにはいかないもん。ただでさえ、面倒見てもらってる上に学費まで出してもらってるし」
「ったく」
困ったように苦笑した陽斗は私の頭を乱暴に撫でる。
「家族みたいなもんなんだから、本当の母親だと思って良いんだって」
「……うん」
「ま、俺もいるしな!」
その優しい眼差しに、胸の奥がキュッと締まるのを感じて。
「…あ、りがとう」
絞り出すように言った。
高倉陽斗は、私の恋人であり家族でもある。
中1のとき、行き場所もなくさ迷っていた私を見つけてくれて、拾ってくれたのが陽斗で。
「怖かったよな。もう大丈夫だから」
初めて人の暖かさを知った。
「ここを家と思って良いのよ」
陽斗の家族もまた、暖かくて。
「俺が守るから」
そう言ってくれた陽斗を、心の底から愛しいと思った。
「俺、お前の歌が好きだな」
シンガーを目指したのは彼の影響が大きくて。
身体が弱くて、高校にも通えずに今は入退院を繰り返している陽斗を。
私の歌で元気にしたいと思っているのは私だけの秘密。
「じゃあ、私……もう行くね。また明日来るから」
「おう、頑張れよ」
その名の通り、太陽のような笑顔に送り出されて、私は今夜も路上ステージに立つ。
「こんばんは。綾瀬詩です」
疎らに聴こえてくる拍手。最近、でき始めたファンが嬉しくて。
アコギを引き、精一杯に私の歌声を奏でた。
494人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
miyu - はじめまして!このお話号泣してしまいました(笑)大切な人と自分の夢…どちらを選ぶかって辛い決断ですよね。最後のほう号泣でティッシュひと箱なくなりました(笑)これから続編を見たいと思います! (2020年9月24日 20時) (レス) id: 522229740f (このIDを非表示/違反報告)
夏目海(プロフ) - はづこ。さん» ありがとうございます!できれば今週中には続編を作りたいと思っておりますので、今暫くお待ちいただければ幸いですm(__)m (2018年2月14日 23時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
はづこ。(プロフ) - とても楽しみにしてます!頑張ってください!(*⌒▽⌒*) (2018年2月14日 15時) (レス) id: 8b66f080ab (このIDを非表示/違反報告)
夏目海(プロフ) - あかりんごさん» ありがとうございます!ヒロインとAAAの物語はまだまだ長くなる予定なのでお付き合い頂けると幸いです!今夜もこの後更新予定ですので、暫しお待ちくださいm(__)m (2018年2月5日 17時) (レス) id: fc74eeea72 (このIDを非表示/違反報告)
あかりんご(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしてます!続きが気になる終わり方…!!!!!これからひろいんとAAAがどうなっていくのか楽しみです!応援しています! (2018年2月4日 21時) (レス) id: b2fbf946ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海 | 作成日時:2018年1月5日 13時