前世ぶりですね、帰ってください。【ωrωrd】 (ページ31)

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ずっきゅん。ページ31

sya side

気になっていた。何もかも。
噂に聞いていた大先生の過保護っぷり、ゾム並みの足の速さ、グルッペンが気に入った女子。

いや、ゾム並みとかどんな化け物やねん。
しかも女子やろ？びっくりもするわ。

最初はそんなことを考えていた。
でも、

A｢ふっ…はっ…くっそ…｣

風のように走る姿。つられて綺麗になびく艶のある黒髪。
差し込んでくる陽の光に反射してキラキラと輝く汗。

ばくばくと脈打つ心臓。

そう、私シャオロンは諦めることのない一生懸命なAちゃんに一目惚れました。

シャトルランが終わった後、隣にいたシッマの馬鹿でかいいびきに目が覚めた。

疲れた脚をなんとか立たせて、辺りを見渡す。
体育はもう終わっていて、生徒はちらほら帰り始めている。
いや、終わったなら先生も起こせや。

｢あ、シャオロン君お疲れぇ～｣

｢すっごいかっこよかったよぉ～｣

後ろから聞こえてきた猫なで声に振り向く。
そこには巻き髪の3人の女子がいた。
暑いねん、腕絡ませんな。

｢なんであの女子入れたのぉ？｣

｢ほんと、邪魔だったわ。｣

｢てか、なんであんな走られたら、ゴリラにしか見えないわ｣

唐突に始まったAちゃんの悪口に自分の顔が引き攣るのが分かる。

『邪魔や。どけ。』

いつの間にかそんな言葉が出ていた。
絡ませられていた腕を振り落とし、掻き分けてその場から離れる。

後ろから俺を呼ぶ声が聞こえるけど、そんなん知らないわ。

ゴリラってなんやねん。あんな細くて白い子に。
Aちゃんはあいつらなんかと、全然違って、
面白いし、口は悪いけど一生懸命な子で。
下心が全然見えなかったし。
そういえば、オスマンと同じ順位も取ってた子ってAちゃんやん。
それに、トントンに怒られそうになった時も一緒に謝りに行ってくれる
優しい子、で………………………………

あれ、そんなことあったっけ。
俺なんで…

足はAちゃんの前で止まる。
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。

やっぱり、白くて細い体、長いまつ毛。端正な顔立ち。
あいつらとは違って、化粧もしていない香水の匂いもしない。

…懺悔します。
Aちゃんに触れてみたくなったんです。
ちょっとした出来心だったんです。

Aちゃんの顔に伸びる腕はとめられなかったんです。

あともう少し…

ut｢何しとるん、シャオちゃん？｣

腕は咄嗟に引っ込め、振り向く。
そこには、Aちゃんの上履きを持った大先生が。

あ、危なかった…