完璧なフリはもうやめて (ページ33)

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入学してからもう何ヶ月か経って、Aといる時間が増えて気づいたことがある。

それは何か我慢をしているとき、拳に力が入っていることだ。

せっかく海に来たってのに全然入らない彼女。

俺はずっと気になってチラチラ見ながらみんなと遊んでた。

ずっと俺たちを見ているのに、心ここに在らずという感じで

目を離したら消えてるんじゃないかって表情をしてた。

慎太郎たちと泳ぎながらも、またAに視線を送ると

今度は横を向いて、固まっていた。

俺は心配になって海を出た。

「どうした？元気ねーじゃん。」

そう声をかけると、ハッといつもの表情に戻った。

それから元彼を見かけたとう話を聞き、案の定拳は強く握られていた。

作り笑いを浮かべてるけど、目尻には薄ら涙が浮かんでいて

気がついたら抱き締めていた。

いつも素っ気なくて、大丈夫だと強がる彼女を

俺が守りたい。

そう思った。

抱きしめた俺のことを突き飛ばしてくるかと思ったけど、

背中には細い腕が回ってきて

誰にも渡したくない

らしくない独占欲が湧いてきた。

俺は多分Aが好きだ。

抱き合って数秒

京『イチャついてんじゃねえーよ！！』

なんて野次が飛んできて

俺からパッと離れた彼女。

いつもみたいに凛とした表情をしていたが、心なしか頬は赤かった。