完璧なフリはもうやめて (ページ20)

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私がこの甘い雰囲気に困っていると

松『返却お願いします。』

北斗くんがナイスタイミングできた。

「はい。」

松『今日は1人じゃないんだ。』

田中くんと北斗くんの目が合う。

なんだこのピリついた空気。

「こっちは田中樹くん。

　今日は来てくれた。」

松『知ってる、同じ中学だったし有名人だったから。』

「えっ知り合いなの！？」

田『慎太郎の友達だよね？』

北『うん。』

田『直接面識はないんだけど、話はよく聞いてる。』

北『俺もよく聞くよ。結構女遊びしてるんだってね。

　中学でもとっかえひっかえで有名だったから。』

そう私の目をまっすぐ見てきた。

まるで私が田中くんが好きだと気づいて、止めるような目で

田『なんか棘のある言い方だな。』

北『ごめんごめん、羨ましくて。

　じゃあねAちゃん。』

完全に戦闘モードの田中くんと、何も言えない私を置き去りにして

北斗くんはいつもより受付から遠い位置に座った。

『なんだあいつ。』

「人見知りなだけだよ。」

『Aちゃんとはずいぶん仲良しみたいじゃん。

下の名前で呼び合ってるし。』

「たまに話すぐらいだよ。」

『もしかして俺お邪魔だった？

　あいつと二人で話したかったから、俺には教えてくれなったの？』

「そうじゃないよ。」

『ふーん。』

そういう田中くんはなんだか不機嫌で、気まずい空気が流れる。

『“じゅり”って呼んでよ。』

突然口を開いたと思ったら、唐突なお願いで困惑した。

「じゅりくん？」

『違う！ ”くん”はなしで。』

「じゅり？」

『ふふっ』

私がそういうと機嫌が直ったみたいでふわっと笑った。

『俺もAって呼ぼ。』

「うん。」

『これであいつより仲良しだね、俺たち。』

「なんで張り合ってるの(笑)」

子供の様に張り合う“じゅり”が面白くて仕方ない。

こんな風に呼び合ってちゃ、いつまでたっても彼を好きでいてしまう。

でも、あるで恋人のように名前で呼んでくれることが嬉しくて、何も言わずに受け入れてしまった。

きっと彼に頼まれたら、私は何も断れないだろう。