完璧なフリはもうやめて (ページ18)

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前回の委員会で1，2年生がクラスが曜日ごとに図書室の受付をすることに決まった。

私のクラスは水曜日。

前回委員会に出席していなかった田中くんに知らせるタイミングは完全に逃した。

伝えたとしても彼は忙しいから来ないだろう、そう思った。

幸いにもこの学校の図書室は小さく、利用者もあまりいないため1人でも十分こなせた。

『今日も一人？』

「そうだよ北斗くん。」

『これ返却お願いします。』

「はーい。」

彼は隣クラスの松村北斗くん。

よく図書室にきているようで自然と仲良くなった。

図書室が閉まる18時まで暇を持て余してる私に本を勧めてくれたことがきっかけで仲良くなった。

『この本もけっこう面白かった。』

「どんな内容なの？」

『主人公が叶わない恋をする話。』

「意外だね。恋愛小説読むんだ。」

『俺にどんなイメージ持ってんだよ(笑)

　俺だって人並みに恋愛してるわ。』

「あー、何気にモテるもんね。」

『まあ、Aちゃんほどではないけどね。』

「自分が好きな人に好かれないとモテるとは言えないよ。」

『それモテるやつが言うセリフじゃん。』

そう笑う。

彼は不思議な人で、よく話すのに深い部分には突っ込まないでいてくれた。

受付の近くの席に座り、本を読み始める顔は綺麗で少し見とれてしまうことがある。

図書室が閉まるまでいつも本を読んでいて、駅まで送ってくれる優しい人だ。

私がありがとうと言うと、決まって

「どうせ俺も駅まで行くんだから別にいいよ」
という。

今日も私が図書室のカギを返し終わり下駄箱に行くと、彼が待っていた。

日が沈みかけた道を彼と歩く。

『Aちゃんて好きな人いるの？』

「北斗くんがそんな話振ってくるなんて珍しいね。」

『いや、さっきの話。

　好きな人に好かれないとモテてないって。』

「あー、それね。」

『いるの？』

「．．．いないよ。」

『今の間、絶対いるでしょ(笑)』

「心読むのやめてよ。」

『付き合わないの？』

「付き合わないよ。」

『なんで？』

「もう恋愛はしないって決めてるから。」

『そんなこと決めるには若すぎるでしょ。』

「そうかもね。」

なぜ恋愛しないのかと深く聞かれることはなかった。

なんとなく察しているのだろう。

彼は私が聞かれたくないことは聞かないし、本当に心が読めるみたいだ。

『じゃあ、気をつけて帰ってね。』

「じゃあね。」

私たちは別々の方向の電車に乗り込んだ。