完璧なフリはもうやめて (ページ16)

今日:35 hit、昨日:40 hit、合計:479,183 hit

16 ページ16

-juri side-

白河さんが教室に入ってきたのは8時28分、遅刻ギリギリだ。

「珍しいね、白河さんがギリギリに来るなんて」

『ああ、今日はちょっと寝坊しちゃって。』

そういう彼女の首には赤い跡がついていた。

やっぱり男いるんだ。

なぜかショックを受けてる俺。

チャイムが鳴って先に着いた白河さんは珍しくあくびをしていて、昨日の夜のことが容易に想像できた。

昼休みになっても彼女はノートのことを何も言ってこなかった。

慎太郎たちと飯を食った後、俺は申し訳なくなって売店でチョコを買った。

教室に戻ると白河さんはいなかった。

いつも一人で外を見ながら弁当食ってるのに、今日は弁当作る時間もなかったんだ。

俺は自分のノートの端を破って

［Aちゃん、ノートありがとう！
　じゅり］

そう書いてチョコと一緒に彼女の机の中に入れておいた。

何となく名前で呼びたくなった。

『じゅりー、もーどこいってたの？』

廊下で大我たちが集まっていて、俺もそこに混じって話していた。

しばらくするとAちゃんが教室に戻ってきて、チョコに気づいたようだった。

彼女はメモを見て驚いた顔をしたが、それからすごくやさし笑顔をしていた。

心の底から笑っているような目で、俺は彼女が気になって仕方なかった。

予鈴が鳴って先に戻ると

『ありがとう』

そっけなく言った彼女だけど、俺はさっきの笑顔を思い出して愛しくなった。

「俺の方こそありがとうだよ。」

『よく私のだって気づいたね』

「文字見た瞬間1発でわかった。」

『字なんて覚えてるの？

　変なの。』

そう言う彼女は少し嬉しそうだった。

それから俺が休んだり、サボったりした時には必ず彼女のファイルが入っていて

お礼に売店のチョコを入れるのがルーティンになった。

最初はチョコ以上のもの求められたらどうしようと思ったが、彼女は毎回嬉しそうだった。

そして俺が

「ありがとう」

と言うと

『うん』

素気ない返事が返ってくる、それだけだった。

こんな面倒なことをしてくれて、それでも何も求めてこない彼女の存在が気になりつつある。