○赤 × 緑 ページ5
重「あのさ…、俺転校すんねん。」
肌を刺すような冷たい風に乗って聞こえてくる愛おしい声。
いつも俺を安心させてくれる声そのままで聞こえてきた言葉は、声とは裏腹に俺を不安にさせた。
声と言葉のギャップについ狼狽えてしまう。
神「は…？」
分かってる。しげやって俺から離れたくて転校するんやないって
でも、あの日言ってくれた言葉は嘘やったん？と思ってしまう
震えた声で言ってくれた “好き” の言葉も
俺が不安になった時にいつも言ってくれた
“1人にさせへんから”の言葉も
神「そ、そうなんや。言ってくれてありがとう。親の都合なんやろ？じゃあしゃーないな。」
つい早口になってまう。
そのくらい焦ってた。
“愛してる” “離したくない” “大好きやで”
確かにしげの声で言ってくれた言葉がぐるぐると回る。
重「ん…。」
重「そのくらいの反応なんや。」
ボソッと呟いたしげは「じゃあ、また後で」と言って教室に戻った。
〜・〜・〜・〜
-帰り道-
神「なんでそんなイライラしとるん？」
いつものように隣を歩くしげはめずらしく眉間に皺をよせ、何か言いたげな表情で歩いている。
重「別に。」
普段では想像もできんくらい重苦しい空気が流れる。
神「別にって…。なんかあったんやったら言いや？
あ、もしかして転校のこと？
あれはもうしゃーないやん。しげの親の都合やろ？
俺は大丈夫やから。」
大丈夫
大丈夫。
大丈夫…
重「俺は大丈夫やない。神ちゃんにとって俺はそんなもんなんか？
俺は転校なんかしたない。神ちゃんと離れたくないっ…。」
神「そんなん俺やって…！」
“神ちゃんにとって俺はそんなもんなんか？”
そんな言葉がしげから出てくるなんか思ってもなかった。
しげは俺がどんだけしげのこと好きなんか分かってると思ってたから。
神「もうええっ…」
気づいたら駆け出してた。
こんなにしげの顔みたくないって思ったん初めてや
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作者名：さみみ | 作成日時：2019年6月3日 0時
