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横尾さんにヤツ当たりしていたら、藤ヶ谷がハァっとため息を零した。


『不安なのも教えてって、いつも言ってるのに…』

「…だって……」

『なに? 北山の思ってること教えて?』

「だっ、て…」


だって、わがまま言って嫌われたくない。
それを言うことさえ わがままみたいに思えて、ごくりと飲み込んでしまった。
言うべき思いを飲み込んでしまったから、胸が苦しい。

なのに、北山? と耳に伝わる藤ヶ谷の声が優しくて、それに応えられない自分が悲しくて、唇を噛みしめてうつむいた。



「…もう。なんで黙っちゃうかな」



呆れ気味な藤ヶ谷の声がスマホと後ろから聞こえて、振り返る。
いるはずのない藤ヶ谷が腕組みして壁にもたれて俺を見ていた。


「ふじ、がや…?」

「しかも上着着てないし」


藤ヶ谷はもうひとつため息をつきながら手に持っていたスマホをポケットにしまうと、ズカズカと大股で歩いてきた。

突然の藤ヶ谷の登場にあっけにとられている俺の腕を掴むと、グイッと引き寄せられた。
ぽすん、と藤ヶ谷の胸に収まると、ふわっと温かいものに包まれる。


「ほら、こんなに冷たくなってるじゃん」


藤ヶ谷は着ているコートの前を開け、俺の身体をそれで包み込んでいた。


「北山は自分の事に適当すぎる」


真上から落ちてくる少し怒気の含まれた声色に驚いて顔を上げれば、怒ったような困ったような藤ヶ谷の顔。


「風邪引いちゃうよ?」


藤ヶ谷の手が、顔にかかった前髪をすくい上げて耳に掛けてくれた。
しばらく俺の耳をいじっていた藤ヶ谷の手が、頬にそっと沿わされる。


「ほっぺもこんなに冷えてるし」


その藤ヶ谷の手のひらの温かさに、鼻の奥がツン…となる。



藤ヶ谷だ。
こうやって抱きしめられたの、いつ振りだっけ?

ずっとプライベートでは会ってなかった。
本当は藤ヶ谷に会いたかった。
仕事じゃなく会いたかった。

だからこの間、楽屋で素直に話せなかったの、すごく後悔した。

本当は毎日でも声が聞きたかった。
名前を呼びたかった。


「…ふじがや」

「ん?」


藤ヶ谷の名前を呼べば、優しい微笑みが返ってきた。


会いたかった、


その言葉を言えないでいると、藤ヶ谷の姿がゆらりと揺れ始めた。
慌てて、ぎゅっと藤ヶ谷にくっつく。

あったかい。

もうそれだけで胸がいっぱいになる。



「…北山」

「…ん? ぅわぁあ!?」


名前を呼ばれるのと、足が地面から離れたのがほぼ一緒だった。


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設定タグ:藤北 , 玉北 , 横北,Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:タレント
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ひろ(プロフ) - 感想になるか分からないですが、、、Dawnのお話を読んで、彼らのの解散にひどく傷ついていたこと、見ないふりをしてきた自分に気付かされました。大丈夫なふりを、していたなって。ずっと聴けなかった彼らの曲を改めて聴きたいと思うきっかけになりました。 (2021年5月27日 20時) (レス) id: 88642e1cbe (このIDを非表示/違反報告)
きたの(プロフ) - 「眠れぬ…」を読んでいたらもっともっとumeno様のお話を欲してここに帰ってきて思ったのですが「イエスだったら目を閉じて」と言いながら瞼にキスを落とすFさんにクラクラしてもうそのページだけで何回も読み返して次に進めなくなっております笑。またお邪魔致します。 (2019年4月4日 18時) (レス) id: 0439536464 (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 和歌の世界を含ませた藤北のお話に自然に涙が出ました。素敵です…有り難うございました( ; ; )このお話に出会えてよかった (2018年7月9日 17時) (レス) id: 9a25a9284f (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - きたのさん» きたのさん、コメありがとうございます。突発的な横北を気に入って頂けて良かったです。落ちついてるふたりでしたね笑 裏設定として次の日のカレーうどんはKさん寝坊でYさんが作り、自分が作るより美味しいとKさんが拗ねるというのがありました(^ ^) (2017年7月22日 18時) (レス) id: 5f3e9630aa (このIDを非表示/違反報告)
きたの(プロフ) - 一度しか投票出来ないのが悔しいくらいに心の中で星押させてもらってます!横北素敵ですね。お互いを気遣いながら恋をする大人なふたりにキュンとしました!横尾さんからみる上目遣いの北山さんの可愛さは格別だろうな〜。素敵な小説ありがとうございました。 (2017年7月22日 15時) (レス) id: 401ec2c6d1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:umeno | 作成日時:2016年11月2日 17時

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