エスケイプ

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本当はこんな時期に訊くことじゃないのに… と後悔し始めた時、中居さんが小さく笑った。


「なんかお前さぁ、慎吾みたいなこと言うのな」

「香取さん？」

「昔よく言われたんだよ、中居くんと木村くんはふたりでいると、無意識に特別感出すからヤダー！って」

「特別感…」

「そー、踏み込みづらいんだとよ。俺と木村が話してると、じーっと見てて、かーわいかったのに、今じゃあんなんだからな」


そう言って、くくくっと笑っている中居さんはなんだかお兄ちゃんの顔で。


「ま、いつからかそう言われることも減ったけどなー」

「それって踏み込めるようになったってことですか？」

「それは慎吾に訊かないとわかんねーなぁ」


少し目を伏せた中居さんが一瞬寂しそうに笑った。


「でもまー、大丈夫じゃね？」

「…ものっすごく適当に言ってます？」

「いや、ちげーって。お前らがいるから大丈夫だろって言ってんの」

「「オレたち？」」


ニカと声が揃ってしまって顔を見合わせれば、中居さんに笑われてしまった。


「多分チューニングしてるんだと思うぜ」

「チューニング？」
「どういう意味ですか？」

「だから……、あーもー めんどくせぇなぁ！ この先は自分らで考えろっ！ お前らのメンバーとお前らのグループなんだから！」


質問ばかりを繰り返していたら、怒られてしまった。
ニカが出し惜しみしないでくださいよっ！ と粘ってるけど、うるせー、宿題だ！宿題！ と手でシッシッと追い払われている。




「中居さん！ 一度楽屋に戻ってもらえますか？」

めげずに食らいつくニカの援護をしようと腰を浮かせたら、廊下から中居さんのマネージャーさんが入ってきた。


「何？ トラブル？」
「いえ、別件の打合せを少し…」

「ん、わかった。―― じゃあ、お前ら後でな」

「「はい！」」


ひらひらと手を振りながら、中居さんはマネージャーさんとスタジオを出ていった。
残されたニカとふたり、顔を見合わせる。


「ねぇ、ニカ。チューニングってどういう意味だと思う？」

「んん〜？ ラジオ…？」



中居さんからヒントをもらいたかったのに、もらえたのは謎の宿題。

もらったからには解かないわけにはいかない…、よね？


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