エスケイプ

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side F


「あはは、それね、もし太輔が特進講習受けてるなら おかずより糖分摂取に重きを置いたほうがいいんじゃないかってことらしいよ」

「え…。 …俺のためなの？」

「太輔、いっつも味見してくれて感想言ってあげてるでしょ。あれ、すごく嬉しいらしいよ」
「しかも美味しくない時はなんでそう思うかもきちんと伝えてるでしょ。腹は立つけど、励みになってるみたい」

「そうなんだ…」


最初は強制的に言わされていた記憶があるし、嘘つくの下手だから 美味しくないのはそのまま正直に言ってしまえと割り切ったのがそんなに喜ばれてたなんて、知らなかった。


なんだか仲間に入れてもらえたみたいで嬉しい。


貰ったお菓子を手に取り しげしげと眺めていると、んん…っとくぐもった声がした。
静かに寝ていた幼なじみくんが起きたみたいだ。



「みつ？ 起きたの？」


渉の声が優しくて、再度ドキッとしてしまう。
なんだか直視できなくて 目線をふたりから逸らした。



窓の外を見ていると、すんすんっと匂いをかぐような音が聞こえた。



「……いい、におい」


耳に残る、少し鼻にかかった特徴的な声が小さく聞こえた。
その声を聞いた瞬間、意識を惹きつけられる。



「みつ？」


んんっと目をこすりながら ゆっくり身体を起こした幼なじみくんは、声を掛けた渉ではなく、なぜか俺の方に顔を向けた。

その時、幼なじみくんの顔を初めて正面から見る形になる。



ぽてりと厚めの唇、少しだけ上を向いた鼻は生意気そうにも見える。ふっくらとした頬は寝起きのためか、うっすらと赤い。
長めの前髪から覗く眠そうな目が 次第に覚醒していく様子を、息をするのも忘れて見つめていた。


２、３度まばたきを繰り返した瞳が、真っ直ぐに俺を捉える。





目が合った瞬間、バチンッ！ と頭の奥で火花が散ったような音がした。








――― それが彼、北山宏光と俺との出会いだった。








花に嵐 preview >＞



next turns ?

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なぜか突然のノンリアルです。
急に思いつき備忘録程度にと書き出したら、全然その長さじゃなかったっていう(計画性って美味しいの？うふふ)
タイトルに「花に嵐」を使用したかったのでエスケイプくくりにしたけど、それってなんのこだわり？と自問自答ー。
previewとあるように今回は出会った所で終わってしまいました爆 ほんとに何も始まってない話ってどうなの？と自問自答ー。
2017.3.12

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