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side F


渉にメッセージを送ると すぐに返事が返ってきた。



―― わかった。待ってるから、おいで。


おいでって…。

弁当部女子たちが、お母さんと揶揄したのがちょっとだけわかる気がした。


渉はもともと面倒見がいい。
中学で生徒会長をしていたし、身長も高く落ち着いた雰囲気から俺にとってはお兄ちゃんって感じだけど…

そういう感じで幼なじみくんの面倒も見てるんだろうか？



西棟の角、要は校舎のはじっこに図書館はある。

学校の図書施設としてはめずらしく、独立した建物で２階分ぶち抜いた図書館は真ん中が吹き抜けになっていて、開放感あふれるデザインになっている。


創立何周年だかの記念で新校舎を造る際に学園長が力を入れたって聞いたことはあるけど、いかんせん校舎のはじっこ過ぎて俺も数回しか入ったことはない。
もしかすると うちの学校に図書館があることを知らない生徒もいるかもしれない。



南中を過ぎた太陽が西棟からも見え始めている。

今日はマフラーもいらないくらいに暖かい。
さっきの桜のつぼみといい、本当に春が近くに来ている感じが心をウキウキさせる。

今週は特別講習で学校にこなきゃいけないけど、そのあと２週間は思いっきり遊ぼう。
そう心に決めると、図書館へ向かう足取りがいっそう軽やかなものになる。



渉は何か予定あるかな？

…弁当部って休み中活動するわけじゃないよな。文化部のくせに運動部より活動日数が多いのってどうなんだろ。

そもそも幼なじみくんだって来週からは休みだろうし、そうしたらさすがに弁当を作る必要はないよな。


よし、渉とどっか遊びに行く予定を立てよう！
そんなことを考えていたら、いつの間にか図書館の前に着いていた。




イベントホールの扉のような、少し重厚感のある扉を開ける。
途端にしん…とした空気が俺を包みこんだ。

入って正面の壁は全面が大きい窓になっていて採光率が良く、静かなのに とても明るい。
まるで透明度の高い水の中から空を見上げた時のように、ゆらゆらと陽の光が降り注ぐ。

しばらくその光に浸っていると自分が魚になった気がしてくる。
ガラスに囲まれた水族館の魚は、こんな気分なのかもしれないな。




司書の先生たちは準備室にいるのか、カウンターには誰もいない。


きょろきょろっと見渡すと、一番奥の窓側、机の上に腰掛ける渉が見えた。
幼なじみくんは…？ と目を凝らすと、渉の手前に丸まっているような かたまりが見えた。


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