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苦笑しながら寝顔を見つめていたら、北山が小さく、ふふって笑った。
その笑顔に胸がじんわり温かくなる。
「…おやすみ」
パーカーを被った頭にキスを落とす。
このくらいは許して。
渉のラテの甘さと左側にかかるあたたかな重みに誘われるように、俺も眠たくなってきた。
北山の頭に頬を寄せ目を閉じた。
まぶたの裏、浮かぶのはさっき俺に微笑んでくれた北山だ。
ね、北山。
俺ね、お前が笑ってるだけでうれしい。
本当はさっきみたいに俺を見て笑ってくれると最高だけど、そうじゃなくてもいいかって最近は思うよ。
ね、北山。
だから笑ってて。
「…絶望も暗闇も全部俺が持っていくから」
ひとりごち、俺はゆるゆると眠りの海に身を沈めた。
ふじがや、
遠くで名前を呼ばれた気がした。
まぶたに温かいものを感じて薄っすらと目を開ける。
ぼんやりとした視界にグレーのフードを被った頭が映った。
……北山、
声に出したつもりはなかったのに、北山が振り返った。
「…起きた?」
「んん〜、ん、うん…」
北山がもたれかかっていた温かさがなくなったからか、少しだけ寒い。
無意識に身震いしていたのか、北山が空いてしまった隙間をブランケットで埋めようと掛け直してくれた。
「悪ぃ、寒かったな」
…違う、そうじゃなくてさ、
「こっちがいい…」
寝ぼけた振りして北山の頭を引き寄せた。
寒かった左側がだんだんと温かくなる。
北山の身体に力が入ったのが伝わってくる。
でも突き離すことはせずに息を止めたみたいにじっとしている。
その重みに愛おしさが湧いてくる。
「…なに見てたの」
少しでも力を抜いて欲しくて、気を紛らわして欲しくて話しかける。
「あれ」
北山はそう言うと窓の外を指差した。
バスはいつの間にか海岸沿いを走っていて、窓の外には水平線が広がっていた。
出発した時は暗かった空が白み始め、もうすぐ夜明けを迎えることを静かに俺たちに知らせている。
「…夜が 終わる」
「ほんとだ…」
そうつぶやいた北山の瞳は、ひたすらに遠くを見つめているように見えた。
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ひろ(プロフ) - 感想になるか分からないですが、、、Dawnのお話を読んで、彼らのの解散にひどく傷ついていたこと、見ないふりをしてきた自分に気付かされました。大丈夫なふりを、していたなって。ずっと聴けなかった彼らの曲を改めて聴きたいと思うきっかけになりました。 (2021年5月27日 20時) (レス) id: 88642e1cbe (このIDを非表示/違反報告)
きたの(プロフ) - 「眠れぬ…」を読んでいたらもっともっとumeno様のお話を欲してここに帰ってきて思ったのですが「イエスだったら目を閉じて」と言いながら瞼にキスを落とすFさんにクラクラしてもうそのページだけで何回も読み返して次に進めなくなっております笑。またお邪魔致します。 (2019年4月4日 18時) (レス) id: 0439536464 (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 和歌の世界を含ませた藤北のお話に自然に涙が出ました。素敵です…有り難うございました( ; ; )このお話に出会えてよかった (2018年7月9日 17時) (レス) id: 9a25a9284f (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - きたのさん» きたのさん、コメありがとうございます。突発的な横北を気に入って頂けて良かったです。落ちついてるふたりでしたね笑 裏設定として次の日のカレーうどんはKさん寝坊でYさんが作り、自分が作るより美味しいとKさんが拗ねるというのがありました(^ ^) (2017年7月22日 18時) (レス) id: 5f3e9630aa (このIDを非表示/違反報告)
きたの(プロフ) - 一度しか投票出来ないのが悔しいくらいに心の中で星押させてもらってます!横北素敵ですね。お互いを気遣いながら恋をする大人なふたりにキュンとしました!横尾さんからみる上目遣いの北山さんの可愛さは格別だろうな〜。素敵な小説ありがとうございました。 (2017年7月22日 15時) (レス) id: 401ec2c6d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年11月2日 17時