俺と彼女の放課後。 ページ7
その水族館はチケット代が一人1400円と高校生にとっては痛い出費となるお値段のものだった。
もちろん、目の前に好きな子がいる俺は華麗に「奢るよ」と言ったが、A本人は、
「いやいや、友達なのにおごってもらうなんて悪いよ!割り勘で」
友達と断言された俺は泣きたくなる。
それに反して、梅原は愉快そうに笑っている。
人の不幸がそんな楽しいか。第一、Aはお前との記憶失くしちまってるんだから元カレ面するのもなんかムカつく。
「平日だから空いてるねー」
呑気にAは受付の人にチケットを切ってもらい、館内をうろうろしている。
「ディープな瀬戸内海を知る増田くんは何の魚が好きなの?」
「俺?俺はー…チンアナゴかな」
「え、なにそれ」
「知らねーの?体の半分が砂に埋まってる奴だよ。ほらこれ」
「え、これのどこが良いの?」
「見えない部分がミステリアスさを醸し出してるだろ」
「やっぱ増田くんズレてるよ!」
大笑いしながらも彼女はゆらゆらと体の半分が砂に埋まったチンアナゴを見つめていた。
「普通こういうのってペンギンとかイルカとか言うんじゃないかな」
「ペンギンもイルカも魚じゃないだろ」
「そうだけどさ。でもそれでもチンアナゴとは言わないよ」
こんなくだらないやり取りも何かすごい宝物のような気がして、こんなときがずっと続けば良いのになと思った。
『このノリで告白するなよ』
こいつまだいたのかよ…。
この鬱陶しい幽霊のせいで楽しい気分は最悪だ。
前を歩いているAに見えないように俺は梅原に向かって中指を立てる。
「放課後二人で遊べるからって調子乗んな」
梅原は中指を立て挑発的に舌を出した。
「増田くん」
いきなりA振り向かって、変な声が出る。
「おっ、おう!何だ?」
「私ね、記憶を失くしてからずっと不安で他人の身体に私がいるような感覚がしていたの」
「お母さんもね、昔のことは話したがらないし、たまに私を他人みたいに扱ったりして私は一体誰なんだろうって思って生きてきていた。今もお母さんって呼ぶのに抵抗あるんだけどね」
寂しそうに笑うAは切なくてとても美しかった。
「でも増田くんに会って私は私のままでいいんだって思えたの」
「A…」
「今日は本当にありがとう。誘ってもらえてすっごく嬉しかった」
あれ?これってチャンスじゃないか?
「な、なぁ!A。俺はお前のことが…ーーー」
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モカ(プロフ) - 梅ちゃん、幽霊か・・・絶対イケメン幽霊!!梅ちゃんとだーます、掛け合いが想像しやすい話で、面白いかも (2015年12月26日 21時) (レス) id: 8d41d46481 (このIDを非表示/違反報告)
21ライアザ - 梅ちゃんがかわいい!! (2015年6月4日 21時) (レス) id: 7a60cc3979 (このIDを非表示/違反報告)
どきん。(プロフ) - 梨々香▲▲ゆっきーは私の嫁(。・ω・。)ゞさん» すいません(^^;)テスト前なので全然更新できなくて…テスト終わったら必ず更新します!コメント本当に励みになります(^^♪ (2015年5月24日 0時) (レス) id: 4d27ec68a3 (このIDを非表示/違反報告)
梨々香▲▲ゆっきーは私の嫁(。・ω・。)ゞ(プロフ) - どきん。さん» まっすーが可愛いすぎてヤバイです!!更新ファイトです (2015年5月20日 22時) (レス) id: ffb1fc6dea (このIDを非表示/違反報告)
どきん。(プロフ) - あいなさん» ありがとうございます!増田さんの愛が深いので楽しいですよー(^-^)/ (2015年5月6日 18時) (レス) id: 4d27ec68a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どきん。 | 作成日時:2015年4月28日 16時