【ONEPIECE】ごめん、離せない。 (ページ25)

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▷ 出航の時４ページ25

ザリ、と地面を踏みしめる度に靴と砂利が擦れる。親切なおじさんと別れてからどのくらい経っただろうか。つい先程、ここに住んでいた時の家を通り過ぎたから町の方までそう時間もかからないはず。10年前まではこの距離を子供の私たちが毎日のように行き来していたのだから子供の体力は恐ろしい。私が思っていたよりも、あの頃の私は案外動けていたのかもしれない。

10年ぶりに歩く道はどことなく見覚えがあり、懐かしい気持ちに襲われる。少しずつ、少しずつ、過去の記憶が引き出されていく。あの大木の根っこにつまづいては手を引いて歩いてくれていたルフィを巻き込んで転んだりしたっけ。私は膝を擦りむいただけで済んだけど、ルフィは盛大に顔から転んでしまったせいでダバダバ鼻血を出して。

＿＿『鼻血ぐらいどうってことねえっ！だから泣くなA！！』

今でもあの時ルフィがとびきりの笑顔を浮かべながらそう言ってくれたことを覚えている。鼻にたくさんティッシュを詰めていたせいで、シャンクスさんにはゲラゲラ笑われていたけど。あの時の私はロングスカートを履いていたから怪我の跡が見えなかったお陰で、ルフィとは違ってシャンクスさんに揶揄われることはなかった。

でも、ルフィは、自分の不注意で怪我をしたわけじゃないのにシャンクスさんに本当のことを言わなかったのだ。私が転んだ時に不運にも巻き込まれてしまっただけだと。言えばよかったのに。「どうして本当のこと、言わなかったの？」と彼に問いかけたら、ルフィは少しの穢れもない瞳で私を見つめて、こう言った。

『おれは！自分の怪我を誰かのせいにするほどちっせえ男じゃねえぞ！？』

思えば、この頃からかもしれない。私がルフィという1人の人間に対して心を開き始めたのは。ルフィは心の広い人間だけど、確かな叶えたい夢があって、幼かったのにも関わらず誰よりも勇気のある人。優しさとかそういうことじゃなくて、人としての器がとんでもなく大きな人なのだと、幼いながらにそう思っていた。……ルフィのことを思い出していくうちに、彼が海賊になるという夢を諦めるわけがないと確信が生まれていく。ルフィが約束を守ってくれるかどうか心配になっていた自分が馬鹿らしい。

ルフィは待つ。約束したからには私が来るまで、ずっと待っている。そんな人だ。

＿＿モンキー・D・ルフィという男は。