▷ 出航の時 ２ ページ23
ねえお母さん、聞いてほしいことがあるの。ん？……うん。凄く大事な話。手、止めさせちゃってごめんね。でもしっかり聞いてほしい。
あのね、私、これから海に出るの。ルフィと一緒に。それで2人で“海賊”になる。
……ううん、冗談じゃない。本気だよ。10年前からルフィと約束してたんだ。子供同士の軽い約束じゃない。ルフィは絶対に海賊になる。私、それをルフィの隣で見届けていたいの。
待って、お母さん落ち着いて。泣かないで。お母さんを泣かせるために海賊になりたいわけじゃないんだから。……あ、いや、だからってすんなり諦めるわけじゃないからね。もう決めたことなの。私も、凄く悩んだ。本当に海賊になるのか。私みたいな取り柄のない女が海に出ていけるのかなって。
それが今もすごく不安なの。
あーうん……海軍ね。私も海賊になったら、海軍に狙われることになるね。私もちょっぴり……いや、結構怖いかなあ。手配書とか出ちゃったりするのかな！？私の顔が載ってる手配書なんか見たら、お母さんひっくり返って寿命縮んじゃいそうっ！
え？私程度じゃせいぜい100ベリーだって？ひどくない！？そんなに貧弱じゃ……貧弱、デスネ……。
もー！！笑わないでよ、お母さん！！
うん。何度でも言うけど、本気だよ。これが私の夢なんだ。海で新しい私を探したい。ルフィと一緒ならどんなことでもできちゃう気がするの。もしかしたら私、航海を終えて帰ってきたら男の子顔負けなくらいにムキムキになってるかもよ？
＿＿これが私の幸せ。結婚して身を固めるよりも、自分の知らない世界をこの目で見に行くことの方がずっと楽しいよ！！……きっとお母さんには寂しい思いをさせるけど、どうか私を信じて送り出してほしい。死なないって、約束するから。
ほら、約束は絶対に守らなきゃいけないって教えてくれたでしょ？だからルフィとの約束もちゃんと果たす。勿論、お母さんとの約束もね。
いつまでも親に守られるだけの子供じゃいられないの。……親不孝な娘でごめんなさい。それでも、この一度きりの人生を自由に生きる権利をください。私に、今この瞬間を生きさせてください。
＿＿＿＿……いってらっしゃい。私と、あの人の、たった1人の可愛い娘。
どうか、あの娘の進む道が明るく救いのあるものでありますように。
そう、天に祈ることしか、私にはできないけれど。
「……頑張って、A」
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