▷ 魂のお見合い破局大作戦 ページ18
幼い時の私は、人と話すことがとてつもなく苦手だった。
あの頃、自分でも自覚はあったけれど、周囲の子供の中でも特に精神的に成長するのが早かった。早い段階で周りよりも少しだけ心が大人びてしまった私は皆との間に確実に生まれていく差を感じてしまって、いつの間にか楽しく遊ぶことができなくなっていた。＿＿そんな時に私の前に現れたのがルフィだった。
まるで台風のように唐突に現れ、私を散々振り回す。最初こそルフィとの間にも差を感じて嫌気がさしていた。だけど私が上手く話せなくても、嫌そうな顔をしても、ルフィは私から離れようとはしてくれなくて、いつしかそれが私にとっての当たり前となりかけがえ無いものへと変貌を遂げていて。なぜかルフィの隣でなら、私は私でいられたの。
そして、ルフィという変人に長年揉まれ続けた私は、引越し後は自然と精神的にも落ち着きを取り戻し、周りの成長と共に次第に周囲にも溶け込めるようになった。
(ルフィの性格に慣れちゃうと大抵のことには動じなくなっちゃうんだよね……)
⚚
「Aさん、こんにちは」
「あ、こんにちはー……」
お見合い(仮)を明後日に控えた日の昼過ぎ、お母さんに頼まれて買い出しに出かけたとき、現在進行形で悩みの種となっている明後日のお見合い相手である酒屋の息子さんと偶然出くわしてしまった。迷いなく歩み寄って挨拶をしてきた彼に、1人で気まづくなりながらも会釈をしながら挨拶を返した。明後日お見合いをしなければならない人と今日会ってしまうとは少しも考えていなかった。
彼は彼で、いつもよりどこか落ち着きがなくソワソワとした様子で私の顔と地面を交互に見やっている。これ以上話すことも無いし、下手にお話をして仲を深めてしまうと後で私が困りそう。どうせ買い出しを頼まれている立場なのでそれを上手く利用してこの場を乗り切らせて貰おう。
「じゃあ……私、買い出しがあるのでここで失礼しますね」
「あ、ま、待って、Aさん！」
「え……」
小さく笑みを取り繕って踵を返した途端、静止の声と共に右手を控えめに掴まれてしまう。まさか引き止められるなんて。驚きを隠せず、ぽかんと口を開けながら彼を見つめると、彼は照れたように頬を掻きながら「俺も買い出し手伝うのでもう少しだけ、一緒にお話できませんか？」と切り出してきた。完全に呆気に取られてしまっていた私は考えるよりも前に頷いていた。
(も、もしかして彼って、私のこと……！？)
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