【ONEPIECE】ごめん、離せない。 (ページ9)

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▷ 幼少期８ページ9

あの一件から月日がしばらく経った。山賊の件があった後、すぐにシャンクスさん達は航海に行ってしまった。いつ戻ってくるのかは分からないけど、そろそろ戻ってくる頃じゃないかなと思っている。

シャンクスさん達がいない間のルフィはいつもよりつまらなそうだったけど、体がゴムになったことだけは楽しんでいた。一生泳げなくなってしまうというのに、むしろ喜ぶなんて不思議。海に落ちない海賊になると言っているけれど、そんなに上手くいくものなのかなあ。

シャンクスさん達がいない日でも私達の日々は変わらない。毎朝8時過ぎに家に訪れるルフィ。山賊の件を知ってからやたら過保護になり始めたお母さんに、家を出る前に必ず気をつけるようにと言い聞かせられる日々。今日も相変わらずルフィに手を引かれて家を出るなり、マキノさんのお店で私達はだらだら過ごしていた。

ルフィは、山賊の件でシャンクスさんがやり返さなかったことにまだ納得いっていないらしい。私としては揉め事が大きくなるのは怖いから、あのときシャンクスさんがやり返さないでくれて良かったなと思っているけど、ルフィは違うみたい。

「……ねえ、ルフィ。ルフィにとって……ぼ、暴力で相手をひれ伏させるのが、カッコイイことなの……？」

「そういうわけじゃねえけど……でも！やられっぱやしはカッコ悪ィじゃないか！」

「そうかなあ……。あ、あくまで私は……プライドとかそういうのじゃなくて、“大事なもの”の為に怒れる人の方が……いいなって思う、かな？」

「あら、もしかしてAは好きな人でもいるの？」

「へっ、？」

マキノさんが愉しそうに笑いながら揶揄ってくるものだから、決して好きな人なんていないのに、まるで図星をつかれたかのように挙動不審な反応をしてしまった。隣でジュースを美味しそうに飲んでいたルフィがブフゥッ！と吹き出し、「お前好きなやついんのか！？」と心底驚いた顔で私を見る。

これ以上誤解を招いてしまいたくないと思いながら首を横にブンブンと振りながら「い、いない…！いない、から！」と必死に否定すると、マキノさんは「残念……」と少しつまらなそうな表情を浮かべ、ルフィは鼻息を荒くしながら「あんま驚かせんな！」と言って、残りのジュースを飲み干した。

＿＿こんな何ともない日々が私の当たり前だった。だけど今思えば、私の人生の岐路はここだったのかもしれない。

「＿＿邪魔するぜェ」

……いつかに聞いたあの声が、再び訪れた。