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作間くんは体温計を脇に挟んで、木枯らしおじさんに氷枕に替えてもらって、ゆっくりもう一度寝転ぶ。
「……でももう、椎名さんと会えないのかあ」
そのセリフで、私の脳内がやっと働きだした。
「え、なんで?!?!?」
「……え、だって、もう会おうなんて言わないんでしょ?」
そう言うと作間くんはニヤッと笑った。
まさにさながら悪魔で、これは私の知らない作間くんだ。
「それに、アイドルだし、女の子と2人で外歩くのは……ちょっと」
そう言う作間くんは、少し寂しそうな顔をした。
そうだ、作間くんはアイドルでしかもJrが脚光を浴び始めた今、スキャンダルは命取りである。週刊誌ほどの騒ぎにはならないだろうけど、確実にショックを受けるファンはいる。
もし作間くんが女の子と歩いてたなんて情報が耳に入ったら、私もショック所の騒ぎではないだろう。
作間くんは少し咳をしてから、続けた。
「でもおれ、椎名さんといると、ワクワク。楽しい。だから、迷惑なんかじゃなかった。それだけ伝えたくて、今日、きた」
少し、たどたどしい日本語。これは、私の知っている作間くんだ。思わず頬が緩んでしまう。
なんて幸せなオタクなんだ。作間くんに一緒にいて楽しい、ワクワクする、って言って貰えるなんて。嬉しすぎて、
泣きそうだ。
「う゛、う゛れじい゛……」
また嘘ついた。もう既に泣いてた。
そんな私を見て作間くんは一瞬目を見開いたあと少し笑って、何も泣かなくても、と呟いて、食べられるかねぇ〜〜なんて言いながらお粥を運んできてくれたフナ子さんに、すみません、ありがとうございますとお礼を言いながらゆっくり背を起こした。
作間くんが思い出したように
「そういえば、俺が来た時も、泣いてた。なんで?」
なんて、首を少しコテンってしながら聞く。可愛い。もう、泣いてたことさえ忘れてたよ。
「ううん!なんでもない!」っていうと、作間くんは少し黙ったあと、ん、って頷いた。
はあ、幸せ。も〜〜、作間くんのせいでまたリア恋こじらせるじゃんよぉ!ライブ何公演入ってやろうか!!
などと泣きながら考えていたら、木枯らしおじさんが
「なに、じゃあ、2人ともウチにきて会えばいいじゃないの!」
…………オイオイまた変なこと言い出したぞ、このオヤジ。
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うめぼしあめ。(プロフ) - 木kooさん» ありがとうございます嬉しいです……!励みになります(T ^ T)頑張ります! (2019年8月20日 13時) (レス) id: 72abe16bad (このIDを非表示/違反報告)
木koo - めっちゃええ話ですね!!!! 私最近第2期作ちゃんブームきてて、最高にいいタイミングで素晴らしいお話に出会えました。 今から続編読んできます これからも頑張ってください(´-ω-`) (2019年8月19日 23時) (レス) id: 3ea7b6f192 (このIDを非表示/違反報告)
うめぼしあめ。(プロフ) - つくねさん» えええ、ありがとうございます……!ありがたいお言葉(TT)頑張ります! (2019年8月1日 8時) (レス) id: 72abe16bad (このIDを非表示/違反報告)
つくね - テンポよく進んでいく感じが面白いです!そしてキュンキュンします!続き楽しみにしてます♪ (2019年8月1日 0時) (レス) id: 87fb818e54 (このIDを非表示/違反報告)
うめぼしあめ。(プロフ) - 冷麦さん» えええ!冷麦さんコメントありがとうございます恐れ多いです……!!人柄だなんてそんな、お恥ずかしい限りです笑笑褒めて頂けるとは嬉しいです、、冷麦さんのお話も楽しみにしてます(;▽;) (2019年7月28日 15時) (レス) id: 72abe16bad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うめぼしあめ。 | 作成日時:2019年7月26日 17時