私、大家になります！～ARS～6 (ページ42)

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智side ページ42

急だったにもかかわらず、予約は今日の午後3時に入れることができた

おいらの切羽詰まった声に勘づいてくれたのだろう
今はただただ感謝しかない

あ、そうだ
一応仕事の3人にも連絡を入れておかないと…

そう思ったおいらは、グループではなく個人の方にそれぞれ入れておく

その後、おいら達は時間までお昼を食べたり
和のゲームで3人で遊んだりとのんびり過ごしていた

その時の翔くんの表情は、小さい子どものようにコロコロと変えており
かわいいなと思うと同時に、この後のことを思うとこの笑顔を奪ってしまいそうで複雑な気持ちだった

いよいよ時間になり、おいら達は戸締まりをして病院までタクシーで向かうことにした

いつもの翔くんだったら、タクシーにトラウマがあるから大変だけど
今の翔くんはお出かけすることに対しテンションがあがっており、
今は車窓から流れる風景におおはしゃぎ

翔「わぁ！ねぇ、かずみて！」
和也「んー？何？」
翔「ほら、あそこ！おそらにわんちゃんのかたちのくもがある！」
和也「ふふ、本当だ。兄貴よく見つけたね？」
翔「あにき？しょうは、しょうだよ？」
和也「…そうだね、翔は翔だね？」
翔「うん！」

さっきから、後部座席に座っている翔くんは、同じく後部座席に座る和に逐一、見えたものを報告している

その都度、和は対応しているが
時々今の彼に向かって“兄貴”と言ってしまい、「翔は翔だよ？」と言われてしまう

つい先日、兄貴のように慕って欲しいと本人から言われて呼び方を変えたのに
退行している時は、その記憶がない彼

今の彼には罪はない。
ただ、彼から発せられる純粋無垢な言葉は、現在和の心を傷つけている

それを証拠に、和は笑顔で対応しているものの
その目には涙が溢れている

智「翔くん、今からお出かけするところ、ここから少し遠いから…お昼寝してていいよ？」
翔「やだ！しょう、ねむくない！」
智「えぇ？じゃあ、翔くんが寝ないなら、智くんと和は寝ようかな」

そう言いちらりと和に合図を送ると、
直ぐに狸寝入りをしてくれた

そうすると、寝ないと言っていた彼は大慌て

「しょうも、ねるの！」と言うとあっという間に
和にもたれ掛かり眠ってしまった

よーく耳を澄ましてみると、和からも寝息が聞こえてくる
ふふ、寝たふりしたはずなのに、本当に寝てしまったというわけか

「ほほ、君たち若いのー」