私、大家になります！～ARS～6 (ページ41)

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智side ページ41

彼女がバイトに行った後
翔くんは明らかにいつも以上に不安定になっていた

分離不安が起きているみたいで、誰かしらがトイレに行ったり自分の部屋に仕事道具を取りに行っている間に不安定になってしまい、

翔「しょうも、いく」

と言いながらその人の後を追っていた

極め付きは、ランチタイムにシフトが入っている潤が出勤する時だ

潤の腕に掴まり、「しょうも、しょうもなの！」と泣き出してしまった

予定が変えられるものだったら、潤にはいて欲しいんだけど…さすがに仕事は難しい

それに、さっき外で彼女は転んだ後そのままバイトに行ってしまったから痛む足で仕事をすることになる

彼女のことだから、絶対に無理するだろうから
もしもの時を考えて潤にはバイトに行って欲しい

そう思ったおいらは、潤に気にせず行くよう伝えて
今にも飛び出しそうな翔くんの身体をおいらと和の2人で必死に抑えた

力があって、翔くんより身長がある雅ちゃんや潤がいない今
翔くんより小柄で力がないおいら達では、おいら達が力尽きるか翔くんがおいら達を振り切るかの勝負になる

ふと、同じ状況になった時のことをうっすらだけど思い出した

確か…翔くんが救急車で運ばれる時、その時のおいらも今の翔くんと同じだった

そんなおいらを抑えていたのは、雅ちゃんやAちゃん、救急隊員の人達だったような気がする…

あぁ…Aちゃん達もこんな気持ちだったんだな
このような方法しか取れない自分は…本当に無力だ

…どれだけの時間が経っただろう
申し訳なさそうな表情をした潤が外を出てから
足音が遠ざかっていくのが分かったようで、

諦めからか、彼の全身の力が抜けてしまい
抑えていたおいら達もその反動で彼の上に覆い被さってしまった

翔「やなの…やなの」

ぽろぽろと泣きながら、うわ言のように言う彼

ちらりと和の方に目を向けると、ちょっと前のように怯えていた彼ではなく
真っ直ぐな瞳で力強く頷いた

…あの日以降翔くんはあの病院でカウンセリングを受けていない

後からAちゃんから聞いた話によると、本当は入院させなきゃいけなかったのに
美和先生の気遣いと翔くん本人の強い希望によって、あの日は入院せずに帰れたとのこと

ただし、その後もう一度カウンセリングにくることの条件付きだけど

だから、翔くんには酷なことをさせるけど
このままじゃいけないと感じたおいらは、美和先生に電話して、
急きょ、カウンセリングの予約を入れた