私、大家になります！～ARS～ (ページ14)

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帰り道ページ14

カラカラとキャリーケースをひく音が響く

A「…よく私の居場所が分かりましたね」

私の問いに私の歩くスピードに合わせて自転車をおす大野さんは
私と目を合わせず前を向いたままだった

智「あんな大声で泣いてたら、どこにいても分かるよ」

っ…何か恥ずかしい

智「…こんなこと言っても言い訳にしか聞こえないと思うけど
おいらも含めて皆、色々あって人と接するのちょっと疲れちゃって…
その時に君のじいちゃんに拾われてここに来たの」

“色々”

その言葉だけで、子どもでバカな私でも触れちゃいけないことぐらい分かる

智「初めて…信じられたのがあのじいちゃんで
じいちゃんがいたから、おいら達はここまでやってこれたんだ…
なのに恩返しも出来ずに逝っちゃって…」

後半涙声になる彼に私は何も答えることが出来ず黙って聞くことしか出来ない

静かになると感じる
うるさい蝉の声と鬱陶しいほどのジメジメとした空気、照りつける太陽

それだけで、今は夏だという現実に戻らされる

なのに炎天下の中、何の対策もせず公園まで来た私…
本当バカとしか言いようがない

智「そういえば君、えっと…」
A「佐藤です」
智「違う！下の名前」
A「A…です」
智「そうそう！Aちゃんは22歳って言ってたよね」
A「は、はい…」

智「っていうことは、今学生さん？」
A「はい、県外の大学に通う4年生です」
智「ふーん…じゃあ大学はおいら達の家から通うことになるの？」
A「そうするつもりです。」

私がそう答えると、無言になる大野さん
…やっぱり、内心では女の私があの家に住むなんて嫌だったんだよ

だけど、バカな私を放っておくなんてできなかったから
こうして追いかけてくれたんだ…

だったら、私…住むのy

智「教えてよ」
A「へ？」
智「大学から帰ってくる時間」
A「えっと…」
智「今は明るいけど、冬とか日落ちるの早いじゃん？だから」
A「言っている意味がよく…」
智「もう！だから！」

そう言うと大野さんは、歩くのを止めると
私を見て信じられない言葉を口にした

智「連絡してくれれば、おいらが駅まで迎えに行くって言ってんの！」