218 情けない 貴方side ページ32
潤「……大丈夫か？」
ほらっと言いながら、綺麗に畳まれた黒いハンカチを渡された
A「えっと…」
潤「奧さん。申し訳ありませんが、お手洗いを貸していただいてもいいですか？」
宮城「えぇ、どうぞ。
案内しますね？」
潤「ありがとうございます。ほら、A」
と言いながら、無理矢理私を立たせ、
私のカバンの中に入っていた化粧ポーチを渡す潤くん
A「え、ちょっ、」
智「……A、一回気持ち落ち着かせてきて」
大野さんの声色の鋭さに、慌てて彼に視線を合わせると……
声と同様の
鋭くて真っ直ぐな目で私を見ていた……
洗面所に入って直ぐ、私は2人が言ったことに疑問をもち、
洗面台の鏡で自分の顔を観察した
A「あ……」
そこには、涙の跡でメイクが落ち
充血した目の私がいた……
A「……何、やってんのよ私！」
思わず握りしめていた手を、洗面台にぶつける
A「今は大事な仕事中なの、私の性で話を止めちゃってどうすんのよ……本当にっ」
悔しさで、涙が溢れてくる
“冷静に話を聴く”
……そんなの、捜査の基本中の基本じゃない
新米刑事ならともかく、
一応、所轄時代も入れると5年以上やっているんだけどな……
本当、自分が情けなさ過ぎて嫌になる
……とりあえず、大野さんの言う通り
気持ちを落ち着かせないと
A「私は刑事……私は刑事……」
自分に言い聞かせるつもりで、何度も同じ言葉を繰り返す。
しばらく経つと、気持ちが落ち着き
同時に涙が止まったのが分かった
A「汚れちゃうけど……後で洗濯して返そ」
私は、そう言うと
先程潤くんに借りたハンカチを使って
落ちてしまったメイクを取った
A「そうだ、メイクも直さないと……」
こういう時本当、あの時の潤くんの気遣いをありがたく感じる
私、鏡を見るまで全然気づかなかったもん……
A「……よし！」
気合いを入れ直すために、
両手でパンパンと自分の両頬を叩く
……うん、今度は大丈夫
そう思った私は、急いでメイク直しに取りかかった
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作者名：うめパンダ | 作成日時：2018年5月22日 12時
