君に夢中さ (ページ34)

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「松倉さんちと違って狭いですけど、どうぞ。」

根負けしたように入れてくれたAちゃんの家。

確かにそんなに広くはないけど、コンパクトで落ち着いた雰囲気のある部屋。

香りにこだわりがあるって言ってたAちゃんの部屋はほんのりいい香りがして、こんな状況だけどドキドキしちゃって。

どうぞ、って控えめに差し出されたミルクティーをありがとう、って受け取って飲む。
なんて切り出せばいいんだろう。

「キスしたこと、怒ってるんならごめん。」

結局、答えはわからなくて、精一杯姿勢を正して頭を下げる。

「Aちゃんが可愛くて、我慢できなくてキスしちゃいました。ごめんなさい。」

Aちゃんが気まずいような恥ずかしいような微妙な顔でそっぽを向く。

束の間の沈黙を破るようにAちゃんがいいですよ、と呟く。

ほっとした顔を上げた俺に。

「怒ってないですよ。そんなこと、いちいち気にしてませんから。」

なんて君は微笑みながら残酷な言葉を吐いた。

その言葉を聞いた瞬間。
ふ、って思わず自嘲気味な笑いが出てきた。

「そんなことって、どういうこと？」

だめだ。もう感情を押さえつける術が見つからない。

「そんなこと」。
その5文字で彼女の気持ちを理解するのには十分だった。