デイライトⅡ (ページ10)

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ソレイユ② ページ10

・・

全然好きになれなかった。
自分も、立ってる場所も、握っているマイクも。

「じゃあ改めてご紹介するね。お付き合いしてる、卯月Aさんですっ」

「卯月Aです。どうぞ宜しくお願いします」

それでもなんとか立って来たのはかろうじてファンの人の声が届く瞬間を幸せだとまだ感じることができるから。

何となくしてみたくて、危険なものに触りたくてしてた恋愛は今思えば全然恋愛なんかじゃなかった。飢えた動物が集まって傷を舐め合ってただけだったんだ。

愛されたかったし、愛したかった。
俺じゃなきゃだめだって言われたかった。

そんな人になってくれそうなあなただから、って言ったらなんて言うかな。

「初めまして！川島如恵留と申します、元太からお話は伺ってます～どうぞ宜しくお願いしますね」

「ご丁寧にありがとうございます、川島さん存じ上げております。いつも応援してます～」

「わ～！嬉しいです～ありがとうございますっ」

アイドルスマイルを浮かべて握手してる如恵留がなんか急に母ちゃんみたいで小っ恥ずかしい。

その後ろからにょきっと出てきたしめが勢いよく「七五三掛龍也です！」とAさんの左手を掻っ攫っていった。

「 Aちゃんやっと会えたね～」

「生しめちゃん～！」

「噂には聞いてたけど、めちゃくちゃ美人さんだ～！」

「えー！こちらこそ素晴らしいお顔拝見できて幸せだよ～いやあ…めちゃくちゃ可愛いな」

「ありがとっ！ふふ」

会ってそうそう手を取り合ってきゃっきゃするな。
間に入りずらいだろ！と思いながらしめをガン見する。

そんな俺の視線に気がついたしめがじっと見たあと、揶揄うように笑った。

「 Aちゃん、元太が拗ねてるよ」

余計なこと言うな！と言ってももう遅い。

とぼけた顔して、ちょっとかがみながら俺の顔覗き込むこの人は今日も安定に無自覚だ。

「ごめん、ね？」

ああもうやだな。俺ばっか、こんなに好きだ。

「可愛いから許す」

「ふははっ、それはどうもありがとう」

真面目な顔が怖いなんてやっぱり俺は子供で、たまにしてる遠くを見てる横顔を見たくはなくて。

どうしてか、なんてそんなの
好きだからに決まってる。

「 Aちゃーん！！」

「おお、中村くん……今日も元気いいねえ」

「こんにちわっ！」

「やだ～なーんて可愛いの」

そんな顔するの、俺の前だけだったらいいのに。