デイライトⅡ (ページ1)

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ジャルージー① ページ1

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うわ、雨降りそう。そう思った仕事帰り。
私に傘を差し出して「送るよ」と微笑んだのは、最近同じチームになった同い年の山中さん。

大阪の本社から助っ人として東京支店へ駆けつけてくださった、所謂めっちゃ仕事出来る人。

何かとお世話になってるし、帰る方向一緒だし、それに私傘ないし…まあいいっかってその傘を受け取った。

二人並んで小雨の降る中同い年ということもあってかオフィスにいるときより少しラフに、何となくたわいもない話をしていたら話の流れで恋人の有無を問われてしまった。

しくったな、そう思ったときにはもう遅くてその澄んだ眼差しから目を逸らす。

「ごめん、困らせちゃった？」

「 …はい。困ってます」

「ふふ。やっぱり面白いね、如月さん」

「え？いや……あ、私ここです」

「へー！ここなんだ」

エントランスどころか、ゲートから住民しか入れない仕様になっているこのマンション。
元太くん曰くここは予約できないから入居できた自分はラッキーだったそう。

彼もそうだけど、私も前の入居者に推薦状を書いてもらえたからここに入れたから。
あの時すぐに決めてよかったなぁと今では思ってる。

「傘、ありがとうございました」

「いえいえ。こちらこそ話し相手になってくれてありがとうございました」

また明日！と爽やかに笑って行った彼は、なんとなく元太くんに似ているような…いや松倉くん？うーん如恵留さんのほうが似てるかな…なーんて考えながらエントランスまで歩いてたら
帽子を目深に被りマスクをしてる怪しい人、ではなくどう見ても松田元太さんが仁王立ちで立っていた。

「 Aさんお仕事お疲れ様」

「元太くんもお仕事帰り？お疲れ様～」

「そ！あ、いやそうじゃなかった。今の人誰」

近くで聞かないと親しい仲だって分からないようによそよそしく会釈して彼の前を通り過ぎたのに、そんなことお構いなしに後をついて来るんだから
あとでもう一度よく言っておこう。

エレベーターの死角に入ってすぐ、彼が顎まで下げたマスクをぐいっと上げる。

「会社の人。そして元太くん、ここ外だから」

「会社の人がどうして家まで来るの」

「傘貸してもらってそのついでに送ってもらったから」

「は？そんなの無しじゃん」

「なんで？」

その答えを元太くんはくれなかった。
エレベーターの中、距離を置く私と黙ってしまった彼。

さて困ったぞ。