【コラボ】混ぜても危険物販売取扱所【短編集】 (ページ41)

今日:6 hit、昨日:10 hit、合計:60,792 hit

それと、好き。ky ページ41

・

『あのさ、』

笑った方がいいよ。
私がそう言ったあの日から、キヨくんはよく笑うようになった。
楽しそうに笑うキヨくんを見て、なんだかこっちも暖かな気持ちになる。

笑うことの増えた彼の周りにも人が増える。私はその塊をぼんやりと見ている事が多くなった。

「最近よくキヨ見るね。気になんの？」

「いや、よく笑うようになったなぁ、って。キヨくんの笑顔って人を喜ばせる力があるんだと思う」

「あはは、何それ。面白いこと言うね？」

持ってきたお菓子を貰いながら私達は話す。随分と賑やかな教室が、私には心地のよいものだった。

＊＊＊

「あ」

「あ、キヨくん」

放課後、中庭。
そのまま真っ直ぐ家に帰ればいいのだけれど、今日はそんな日になれなくて。
中庭にベンチと自動販売機があるのを思い出し、ふらふらとやって来たのだった。
何か買う？そう言うキヨくんの言葉に私は頷くと、何を頼むのかと聞かれた。

「え？あ、ココア…かな。最近寒いし」

「ん、そうだな。また明日も冷えるらしいぜ」

財布を鞄から取り出すのと同時に、足元からガコンッと音がした。そのまましゃがんだキヨくんは販売機からココアを取り出す。

「ちょっと話、付き合ってくんね？」

これ、そのお礼ってことで。

「どうしたの？」

ベンチに並んで座り、私はキヨくんに問いかける。空を見上げた彼は、くしゃりと笑って、

「いや、お礼言わなきゃな。って思って」

と、照れ臭そうに頬をかいた。
ゆっくりと顔を此方に向けて、

「笑おう、って思ったのお前が言ってくれたからなんだ。…だから、ありがとう」

嬉しそうに笑う彼に、私はとんでもないと首を振る。キヨくんの笑顔が素敵だから、皆もキヨくんと仲良くしようと思ったんだよ。

「初めてちゃんと話してくれて嬉しかった。」
「え？」

私の目を見つめて言うキヨくんの頬や耳は赤く色づいている。不意に腕を軽く捕まれて、何か伝えたい事があると悟った私は、黙って彼の言葉を待った。

「…これからも、話して欲しい。俺、目付き悪いかも知んないけど。
あと、いっぱい一緒に笑おう。俺、笑った顔好きだし、可愛い、と思う、から……」

え、え、なんだこれ。
どんどん赤くなるキヨくんにつられて、私の頬も熱くなる。

「だから…えっと、」

するり、とキヨくんの手が私の手を掴むようにおりてくる。

「好き、なん…ですが」

きゅっ、とその手を握られる。

あぁ、心臓が煩い。

«どうか幸せなハッピーエンドを。»