手を繋いで、一歩先へ。fj ページ39
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『お前さ、なんでそんな嬉しそうなの?』
「へ?」
1ヶ月に1回、必ずキヨにそう聞かれる。
怪しい、とでも言うようなジト目で俺を見るのだ。勿論俺は理由を知っていて、でも言えなくて。
ヒラに自分が嬉しそうかと尋ねればコクコクと頷いた。
月に1回、俺の所属している委員会は朝に会議がある。ちなみにヒラもその委員だ。
けどヒラとは待ち合わせをしないで俺は1番に学校につき、鍵とその日の資料を貰う。
そして委員会の場所定着している教室で静かに資料を纏めるのだ。
最初こそ会議が長引くのが嫌なのと、皆が少しでも助かればいいなと思い行動したけど。いつからか。
「おはよ、Aちゃん。」
「おはよ、フジくん。」
彼女に1番に会いたくて、話したくて来ている自分がいる。
彼女とは去年から委員会が一緒だ。だから、この時間でのお手伝いも、お話も恒例になっていて。
急がなくていいのに、わたわたと鞄を置いて俺の隣に来てくれるのがすごくかわいい。
好きだなぁ。といつからか思うようになった。
すぐにヒラにはバレてしまって。
『だってフジ委員会の時ずっと目線の先がAちゃんだもん。』
確かに、キヨにバレるとめんどくさいもんね。黙っててあげる。と言ってくれた。
もしキヨにバレて彼女の耳にまで届いてしまえば大惨事だ。その時俺は必ず気絶するだろう。
「昨日ね、帰り道に子猫がいて。」
「へえ、Aちゃん猫好きだもんね」
「うん。懐く子でさ。ほんと可愛かったなぁ。」
嬉しそうに語る彼女は本当にかわいい。
そうなんだ。と返す俺がそう思ってるなんて彼女は思いもしないだろうけど。
本当はこんな仕事さっさと終わらせて勉強や、眠いのなら全員が集まるまで寝てしまえば良いのだけど。
この時間だけは邪魔されたくなくて。
この時間だけは欲しくてたまらなくて。
来年になったら委員会が変わって一緒になれるか分からないから。
今だけでもいい。隣に居たいんだ。
でもやっぱ、欲張っちゃって。
「あの、さ」
「ん?」
「今度、遊びに行かない?ほら。猫見に行ったりさ、最近人気な映画とかもあるし!……どうかな?」
あぁ、馬鹿みたいに心臓が痛い。
きっと俺情けない顔してるんだろな。
けど君はふわりと笑った。
「うん、私も行きたい。」
自分から聞いといて、いいの?とか情けないけど。
俺、君が大好きなんだ。
《特別な時間だけじゃとても足りない。》
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雪乃 空(プロフ) - 一話一話とても丁寧で、どの作者様のお話もとても素敵な文章でした。またの機会があれば、ぜひもう一度読ませていただきたいです。良い短編集でした! (2017年12月1日 20時) (レス) id: a8e76523f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:主催:右京大河 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ukyota/
作成日時:2017年10月17日 14時