【コラボ】混ぜても危険物販売取扱所【短編集】 (ページ28)

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関係解除希望＊trco ページ28

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「違う、もうちょっと声出して。腹筋意識して」
「はいっ」

防音の完備された狭い個室に二人の男女。
この文章では少々誤解を生むことがあるかもしれないがそんなことは全くもってない。
スターシンガーになることを夢見た一人の生徒と指導する先生、といういたって普通な関係。

「ちょっと休憩、お前今日声出てないぞ。喉大丈夫か？」

そう彼女に聞くと渋い表情をした。
ああ、悟られたくなかったのか。

「やっぱりわかりますか」
「いつもより伸びが良くないことぐらいわかる」
「うう、すみません……」

いや、別に責めてはないんだけどさ。
ただ心配しただけで。
まさに先生と生徒を思わせる上下関係。
きっと恋人とかなら、もっと違う反応があるんだろうか。
唐突に脳裏にその疑問が浮かび、無意識に彼女の頭部に手のひらをのせていた。

「え？」
「あ、いや、そのさ……。ちゃんと休んで治せよ。無理にボイトレ出なくても良いんだぞ」
「は、はい。わかりました」

明らかに彼女も動揺していた。
そりゃあそうだろう、2年間彼女のことを指導してきたがこんな事をしたことは一度もない。
何やってんだよ俺！
思わず生徒に手出しました、じゃ取り返しつかねえぞ、正式に告白して付き合ってそれなりの月日を共にしてからっていう計画だろ！

今までの感じでもわかるように、俺は将来スターを夢見る6つも年下の子を好きになってしまった。
成人ではあるがこの関係性が邪魔をして中々上手くいかない事が多い。
この前歌の地区予選みたいなものに出場した際に彼女が優勝したのでちょっと張り切ったプレゼントをすると本戦で優勝した時にお願いします。と丁重にあっさり断られた。

俺のアプローチが足りないのか？
この前異性に慣れてそうな友人に話を聞いてもらったが役に立たないアドバイスばかりだった。
俺の周りにいる奴はそういう奴ばかりだ。

「ﾀﾗﾁｵ先生、もう少しお願いします！」
「だからその名前で呼ぶなって」
「だから呼んでるんですよ」
「ばーか」

にひひ、と悪戯に笑う彼女は可愛らしかった。