【コラボ】混ぜても危険物販売取扱所【短編集】 (ページ25)

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向日葵の笑顔＊隼ページ25

招待された結婚式。
目線の先には綺麗なウェディング姿のお嫁さんと、タキシードを着こなすフルコンさん。

「ご結婚、おめでとうございます」

私、Aは本日失恋しました。

「Aさん、ありがとうございます」
「いえいえ！ドレス凄く似合ってますよ！」
「Aや！今日は来てくれてありがとうなー！」
「当たり前です！私を誰だと思ってるんですか？」
「…妹？」
「ピンポ～ン！正解！」

実際に血の繋がった妹では無い。腹違いとか生き別れの兄妹とかそういう訳でも無い。
フルコンさんが『妹みたい』と私を可愛がり続けてくれた結果のこの関係。私はフルコンさんに長いこと片想いをしている。でもそんな恋も今日でおしまい。私は、理想の妹像を演じ続ける。

「お兄ちゃんの幸せは、私の幸せでもあるんだから！」
「ほんま、ええ子やなぁ…Aは」
「えへへ」

微笑みながらポンポンと優しく頭を撫でた。フルコンさんと出会った当初からスキンシップがかなり多めで、今までしょっちゅうされてたのに思わず振り払いそうになる。その暖かい手も、私の胸を締め付けるには充分だった。
今やっちゃダメなのは、泣く事。今やらなきゃいけないのは、笑う事。

「せやから…」

我慢の末に強く握り拳を作っていた私の腕をフルコンさんはぐいっと引っ張って、ぎゅーっとその手で包み込んで耳元で囁いた。

「これからも、仲良くしてな」

片耳に掛かる甘い声と吐く息は全身を震わせた。
私はただの妹で疚しい気持ちなんて無い、ひたすら脳内で繰り返す。笑顔を見せなきゃ、妹としてちゃんと祝わなきゃ、ぐるぐるとその言葉が身体中を駆け回る。フルコンさんの幸せを望むのが義務、泣くな、私。

「勿論です。また一緒に、遊んでくださいね！」

さよなら。私の淡い恋心。

「末永くお幸せに！それじゃまた連絡します！」

フルコンさんの太陽のような笑顔に負けないように、私も精一杯の笑顔を見せる。フルコンさんもお嫁さんも柔らかい笑みを浮かべて一つ頷くとひらりと手を振った。

「愛しています、フルコンさん」

夫婦から離れた場所で呟いた一言は、式場の騒音に混ざって溶けて消えていった。

*

「Aさん、お疲れさまです」
「…とわこさん。今晩は空いてますか？」
「こうなるだろうなと思って、空けときました」
「ほんと、流石ですね。今日酷く飲むと思うので介護お願いします」
「了解、です」

横から聞こえた何処ぞの狐さんの溜め息は、気のせいだと思う事にした。