【コラボ】混ぜても危険物販売取扱所【短編集】 (ページ22)

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オレンジと君 ◎ rtrt ページ22

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放課後の夕日に染まる教室に、たったひとつ響く泣き声。
俺はそれでもどうすることもできなくて、ただそこに立ち尽くした。

『ごめん…すぐ、出て行くから』

忘れ物を取りに来た俺は、その教室で泣く彼女を見つけた。…彼女も俺に気がついて、必死に涙を拭ってそう言った。

『いいよ。無理しなくて』

それに対して俺が放ったその言葉に、彼女はさらに俯いてまた泣き出した。
「振られたの」、静かに彼女はそう言った。

彼女、Aちゃんはみんなからの人気者で、優しくて可愛い、明るい子だ。…そんな彼女が、生徒会長でも、学年1番人気でもなんでもない、平々凡々な、だけど包容力のあるような、そんなテニス部の男が好きな事は知っていた。
それを聞いたときから俺は、周りや外見に流される事なく、その人自身の中身を見て好きになる人を選ぶAちゃんに、俺はそれまで以上に惹かれてた。

「レトルトくん、忘れ物？わたしも一緒に探そうか？」

だからこそ、余計に、悔しかった。
外見を見て人を選ぶような子なら、きっと俺自身が好きになってなかったとはいえーー、こうして内面を見てくれる彼女に、俺はなにもできなかった。
サッカー部のエースじゃない、野球部のキャプテンでもない俺にだって、Aちゃんに好きになってもらえる可能性はきっと、あった。

「いいよ、そんなの。…Aちゃんが泣いてる事のほうが、心配」

そう思うのに、出てくる言葉はなんでかぶっきらぼうで、俺の吐く言葉には、嫉妬が混じりに混じってた。

「……レトルトくん、優しいんだね。…ありがとう」

俺、優しくなんてないよ。勇気があるわけでもないんだ。今だって、こうやってあいつのために泣くAちゃんになんて言ってあげればいいのか分からない。…今更ハッキリ自覚した気持ちを伝えてみる勇気も、全然出て来ない。

「……いつでも、相談相手になるから。…1人で泣かないで」

だから出てくるのはそんな綺麗な言葉ばっかりで、だけどそれだって本音で。

「うん、ありがとう。…嬉しい」

そんな言葉でもAちゃんは、笑ってくれる。それだけで嬉しいのだって、本当で。
「あいつを忘れさせるから」とかそんなこと言うタイプじゃなければ、「好きだよ」と今ストレートに言えっこもないけれど。

「よく、頑張ったね」

いつか、Aちゃんを振ったことを絶対あいつに後悔させてやろう。そう思いながら、俺は彼女の頭に遠慮がちに手を乗せた。