【黒尾鉄朗】187センチ前の席《 完結 》

｢わすれて｣ ページ49

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え、待って、いま私なんて書こうとした？

って急に我に返り、ノートに書いた文字を消しゴムで消すように、黒板に書かれた文字を黒板消しで消すように、黒尾の背中を軽く何回か叩いてさっきの文字を取り消したあと、思わず｢わ｣｢す｣｢れ｣｢て｣の4文字を勢いで急いで書いた


え、私、いま、無意識で黒尾に告白しようとしてた？
｢す｣｢き｣｢で｣｢す｣とか書こうとしてたってこと？


約束していないのに黒尾からネクタイとボタン貰って浮かれていたのかもしれないし、友達が先生に告白してくるって言うから感化されたのかもしれないけど

そもそも、黒尾と友達になるとき、私のことタイプじゃないし好きにならないって言ってたじゃん、だから告白したところで失恋は確定だし、書こうとしていた言葉を勘付かれたら友達でさえなくなっちゃう

なんて考えている私を他所に黒尾はゆっくりと振り向いて、机に置いていた私の手を取り、指を絡めてくる




｢最初のさ、す、から始まる4文字、なに書こうとしてたか知りたいんだけど｣

｢やだ、言わない｣

｢じゃあ、俺が期待したやつ言っても良い？｣




期待したやつ、ってどういうこと？なんて思いながら、とりあえず頷いてみると、黒尾は深呼吸をしたあと照れ臭そうに少し笑い、私の目を真っ直ぐ見て





｢好きです、Aのこと｣





って急に緊迫した表情になって、まるで、告白するみたいに、真剣な声色で私にその言葉を掛けた

本当に告白されたような空気感が2人しか居ない教室に流れているけど、黒尾が私の言いたかった意味で私に好きって言ってくれたのかは分からないし、私も黒尾のことが好きだから、変に茶化して笑って流すことも出来なくて、なんて答えるべきか悩んでいると、黒尾はそんな私を見て軽く吹き出すように笑い出した




｢って、俺が言いたかっただけ、俺の好きは、友達の好きじゃなくて、恋愛の好きなんだけど、やっぱAは、俺のこと友達としてしか見れねえ？｣




そう言って黒尾は絡めていた手を離し、少し眉間に皺を寄せ自信無さげな表情を浮かべながら首を傾げる

私も黒尾のことが好き、友達としてじゃなくて恋愛的な意味で、って素直に言いたいけど

今更、そんな言葉じゃ足りない気がしてきて、私も覚悟を決めるように小さく深呼吸をしたあと、黒尾の頬に両手を添え、突然のことに目を丸くして驚いている黒尾と段々と距離を縮め、軽く唇を重ねた




ねえ、友達じゃ、唇は触れられないでしょ？

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