【黒尾鉄朗】187センチ前の席《 完結 》

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｢黒尾おはよ、はい、遅くなったけど誕プレ｣



黒尾の誕生日から1週間が経った日曜日の昨日、友達と買い物してたときに良さげなのを見つけたから何となく買っちゃって、朝練の終わった黒尾に小さな黄色の紙袋を差し出すと驚いた顔をされる




｢えっ、まじで？｣

｢試合見に行くだけじゃやっぱ味気無いと思って、本当、大したものじゃないけどね｣

｢いや来てくれるだけで充分なんですけど、サンキュー、中身なに？開けて良い？｣

｢どーそ、開けちゃって｣




私がそう言うと、黒尾は嬉しそうな顔で紙袋からラッピングされた小さな箱を取り出し包装を開け始める

バレーって指先も使う競技だし乾燥の気になる時期になってきたし香りもそんな強くないから黒尾の誕プレにちょうど良いんじゃない？って思わず買っちゃったロクシタンのハンドクリーム

どうかな？と思って私も期待混じりに頬杖ついて黒尾を見ていると｢おっ｣と嬉しそうな声が聞こえてくる




｢ハンドクリームか、良いじゃん、有難く使うわ｣

｢これ有名なだけあって結構良いよ、保湿力高いし｣

｢へー、お揃い、ってやつ？｣

｢ってやつ！テクスチャー重いのあんま好きじゃないから持ち歩いてはいないけどね｣

｢ふーん、いつも使ってんのどんなやつ？｣

｢いつもの？ちょっと待ってね｣




そう言ってリュックの中からいつも持ち歩いている小さいサイズのハンドクリームを取り出し、黒尾の手の平に中身を適量のせると両手に馴染ませ始めた

熱をもったハンドクリームはいつものピュアシャンプーの良い香りを強くさせていき、黒尾の手からは自分のいつもつけている良い香りが漂ってくる




｢あー、これか、いつものいい匂い｣

｢いい匂いよね、女の子、って感じで、家出る前に付けてるボディミストと同じ香り使ってるんだけど気に入り過ぎてハンドクリームもこれにしてるの｣

｢良いんじゃね？俺もこの匂い好きだわ｣

｢黒尾には似合わない香りけどね｣

｢そりゃそーでしょーね！｣




なんて軽口叩いていたら朝のHRを知らせるチャイムが鳴り始めた。チャイムの鳴るなか、黒尾は｢誕プレありがとな｣って改めて私にそう言い嬉しそうに笑って私の頭を軽く撫でてから前を向いた

私が渡したかったから渡したみたいなところもあるけど、こんな喜んで貰えると余計嬉しくなって、いつもの黒尾の大きな背中も御機嫌なように見えてくる

本当、ハンドクリームプレゼントするの結構当たりだったみたいで良かった

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