2. ページ2
▽
「よっ!夜遅くまでお仕事お疲れさまあ」
「……なんで居るんですか?」
駅の改札を抜けて西口の階段を降りていると声を掛けられた、昨日、日高屋で会ったレトさんに
なんで居るのかと、怪訝な顔を隠し切れなかったせいかレトさんは目尻に皺を寄せてにこやかに話し出す
「待っとったねん、綺羅璃さんのこと」
「だから、私は綺羅璃じゃないです」
「えー?でもあの編集画面はどう見たって綺羅璃さんのレトルト作品やったやん?つまり綺羅璃さんって俺にそういうことされたいん?」
「だから、私は綺羅璃じゃなくて」
「あっ、そうそう、綺羅璃さん自分、昨日カウンターにリップ忘れとったろ?これ3000円するぐらいやつやろうし返した方がええかなあ、って思って」
「あ、それ……有難う御座います」
はい、とレトさんのコートのポケットから出されたのは確かに私が使っているMACのデュボネのリップ、受け取るとき少しだけ触れた手は冷たくて
これを返す為だけに、いつ帰ってくるか分からない私を何時間ここで待っていたんだろうと心配になった
てかいま普通に自分がレトルトってこと言ったよね?私が綺羅璃ってこと否定してるのに決め付けてきたし、まあ、合っているんだけど本当に違う人だったらどうすんだろ、とか色々思っていると突然
「俺なあ、綺羅璃さんの書く文好きやねん」
「え?」
「昔の作品も全部リアルタイムでおっとったし、俺とかキヨくんの特徴よお掴んどるなあって思っていつも更新楽しみにしとるんよ」
なんて言われる。何か言葉を返してしまったらボロが出そうで、もう偶然では一生会わないであろうレトさんに会釈して帰路を辿る
カツカツ、とアスファルトを鳴らすヒールの音が思わず早くなって顔にも何だか熱が集まっているような気がした、だって仕方ないじゃん
幾ら本人とは言え長年読んでくれている読者さんから本当の声であんなこと言われたら流石に嬉しくなってしまう
「……家帰ったら短編でも書こうかな」
そう思ってしまう私はだいぶ単純らしい
ただ、呑気にこんなことを思っている私は、またレトさんと会うことになると思っていなかったしこの出会いが私の今後の人生が全部変わってくるなんて思っていなかったし、何より
「Aちゃん、またな」
なんて私の後ろ姿に投げられた言葉も、このときレトさんの言葉で御機嫌だった私は気付く筈なかった
255人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
右京大河(プロフ) - 秋葉聖奈さん» ジャンル問わずコメントして頂き有難う御座います◎!とても嬉しいです。歳を重ねるにつれて異性と付き合うって好きという気持ちだけで上手く行くわけじゃないのでその辺を良い感じに書けたかは分かりませんが感情ごちゃごちゃと言って頂けて作者として少し安心しました (2021年1月27日 8時) (レス) id: e1e61173bd (このIDを非表示/違反報告)
秋葉聖奈(プロフ) - 右京さん完結おめでとうございます!更新お疲れ様でした!上げられたり下げられたりにやにやさせられたり最後の最後で意味深なこと言われたりして感情がごちゃごちゃです(笑)読んでて大人になると異性を信じるって難しいの共感しまくりでした。とても面白かったです! (2020年12月26日 23時) (レス) id: 14be183e20 (このIDを非表示/違反報告)
しょん - とても面白いです!続きも楽しみにしています!体調には気をつけてお過ごしください! (2020年7月10日 14時) (レス) id: b6b2defad5 (このIDを非表示/違反報告)
らー - 更新頑張って下さい!応援しています!体あと、体に気をつけて下さいね!! (2020年5月13日 0時) (レス) id: dfcc16d1fd (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - レトさんのグズ感がたまらないですね!最高です!これからも頑張ってください!! (2020年3月28日 16時) (レス) id: 6aceb657ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:右京大河 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ukyota/
作成日時:2020年1月1日 7時