【短編】道端に咲く花【実l況l者】

0時前後に我儘を【aisn】＊ ページ41

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駅前の居酒屋についたのは12月5日22時前、店内は明るくどちらかと言えば大衆酒場に近い賑やかな慣れ親しんだ居酒屋

こーゆー店に連れていかれるあたり改めて自分のポジションを再確認する、本当ただの女友達なんだな、って

まあ、こんな住宅街の駅前居酒屋に洒落た個室があった方が珍しいか、そう思ってメニューを開く



｢愛ゴリ何飲む？｣

｢俺烏龍茶、お前ビールだろ｣

｢ご名答、ご飯は？私卵焼きと餃子食べたい、あと任せる、適当に頼んでよ｣

｢おー｣



出来たての料理と会社の愚痴を肴に乾杯して喉を潤す、久々の愛ゴリとのサシ飲みでテンションが高いのか私の飲み物はすぐなくなって追加追加で苦手な焼酎も頼んでたら、まあ、御察しの通り酔っ払ってしまった、大丈夫、歩けるからまだ大丈夫

そう思ってスマホの時間を見ると23時15分、ラストオーダーでデザートを頼んで少し酔いが冷めた頃にお会計を済ませた、勿論割り勘

アルコールで火照った身体を外に出すと途端に冷たい風が出迎えた、寒い寒いと言いながら車に乗り込むと愛ゴリが暖房をかけてくれた、23時52分

愛ゴリが家まで車を走らせていると日付が変わったことをに気付く、0時00分、12月6日、昔、勇気を出そうか悩んで結局何にも出来なかった苦しい思い出の日




｢あれ、今日愛ゴリ誕生日？おめでとうー！｣

｢おー、有難う、よく覚えてたな｣

｢いま思い出したの！奢れば良かったね｣

｢いや、いいよ｣

｢じゃあなんか欲しいものとか、ないの？｣




｢んー、強いて言うならお前？｣




｢……愛ゴリ酔ってる？｣

｢運転すんのに酔ってるわけねぇだろ｣

｢確かに｣



暫くの沈黙が続く、聞こえるのは車を走らせる音と高くなる心拍数だけ

いつもみたいに、軽い冗談だって言ってくれればいいのに、なんで今日はそう言わないんだろう、とアルコールの入った身体じゃ都合良く解釈してしまうだけで、話すどころか目も合わせられず窓の外を見る

気付いたらもう家の近くまで来ていて車が止まる、観念して笑顔を作り、深呼吸


｢ねえ、さっきのあれって……｣


そう言いかけると、なんも言うな、と言うように唇が塞がれた、｢じゃあまたな｣と言う愛ゴリの声と助手席のドアのロックが外れる音、だから私も黙って車を出る



｢返事、いつでもいいからよお｣



寒いのに窓を開けて少し照れた笑顔で言われたその一言に、言いたいことは全部打ち消された

優しい貴方の我儘に振り回されるのも悪くない、らしい

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