【短編】道端に咲く花【実l況l者】

我儘を受け止めて【nnc】＊ ページ35

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6月の中旬、例年通り梅雨の季節真っ只中
強く窓に打ち付ける雨の音と教室の中で話すクラスメイトの声、そんな雑音が交じる中1つだけクリアに聞こえてしまうのは俺の1つ前の席に座るキミの声

仲の良い女子達がAちゃんの席の周りに集まり雨の日だと遊びに行く場所限られるよね、とかそんな話をしている、耳を立てて話を聞いていると｢私は映画か水族館かなあ、プラネタリウムだと寝ちゃいそう｣とAちゃんらしい呑気な返答

ふふ、寝ちゃいそうとかかわええなあ、俺と行くんやったら全然寝てくれても構わないのに、むしろ寝顔見たいんやけど、なんて思っていると休み時間を終えるチャイムの音、周りにいた女子達は自分の席に戻り後ろ姿ばかり見せてたキミが次は楽しそうな笑顔を見せる




｢ね！もうすぐななくん誕生日だね！｣

｢え、あー、せやな｣

｢誕生日なに欲しいとかある？｣



急に話しかけられて適当な返事をしてしまった、え、なに、誕生日？誕生日って俺の？

え、祝ってくれるってこと？
えっ、嬉しすぎひん？！
これ、俺のこと好きなんちゃう？！

けどそんな馬鹿みたいに舞い上がる気持ちは抑えて、好きな子には余裕のある男に見られたいがために余裕がある振り




｢えー、そんな唐突に言われてもなあ｣




Aちゃん

なんて言えるわけもないし、だからと言って欲しいものがすぐ思いつく訳でもないし、いや、欲しいものは色々あるんやけどプレゼントしてもらうのは違うというか、自分で買うべき必要なモンしか今のところ思い付かんし……

あ、せや、あれ、あれにしよう

頭を捻らせていると1つ、良い案を思いつく
俺が思わず声を漏らしてしまったのを聞き逃してくれなかったキミは面白いぐらいに食い付いてくれて、なになに！とテンションの高い声




｢あ！高いものはなしね！私が買える範囲！｣

｢わーってるって！せやなあ｣




答えなんて決まっているけど、少し勿体ぶって、早まる鼓動に振動されて上擦り震えそうになる声を乗せて、隠したくて隠したくてしゃーないけど出てきてしまう照れ臭さに笑って

キミを困らせるであろうことを口にする




｢俺の誕生日、どっか遊びに行かへん？｣




豆鉄砲を食らったような鳩みたいな顔をして、え、と言いかけたAちゃんの声はチャイムと同時に入ってきた教師の声によって掻き消された

大慌てで前を向くAちゃんにちょっと笑いながら俺も教科書を開く

ああ、こんなズルい俺の我儘を受け止めて

小さな鎖で囚われて【kyktk】＊→←糖度高めの煮た者同士【nnc】

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