赤緑短編集

衝動-1 ページ6

緑side

「あ。」
と声に出した時にはもう遅かった。もしかしたら声に出したことが起爆剤になった可能性もあるが、それに関しては今の俺にはどうでもいい話だ。
とりあえずこの衝動を解決させたい。そんな時に限ってこの衝動を唯一解消してくれる存在が居ないことに心の中で悪態を吐く。
いつもは嫌というくらい居るくせに。あほ。ニラ切れそうやから買ってくるわ！ってなんやねん。

そんなことを思っていたところで衝動は消えるどころか増していく一方なうえ、出かけている相手が帰ってくるわけでもない。
ゲームをしたり作詞制作をしても衝動は身体中に付きまとい何もやる気が起きない。
あかんなぁ。と小さく振動に乗った音は誰かに聞かれることも無く消えていった。


暫くするとドアの施錠が開けられる音がした。鍵の持ち主なんて自分以外では一人しかいない。
ただいまぁ。と気の抜ける声に駆け寄ると、声の主は飛び切りの甘い声で「とも」と呼ぶ。この声と顔は特別好きだ。自分だけにしか向けないから。
「おかえり。はよ手洗って。うがいもして。」
「ちょっと待っててな。」
荷物を手早く冷蔵庫にしまった彼は洗面所へ消えていく。やっとこの衝動から開放される事とこれから起きるだろう甘く優しい時間に胸を高めつつなんとなく離れることが惜しくて洗面所前の廊下で彼を待つ。
水の音をBGMにし、ゆらゆらと揺れてみたところで待ち遠しくしてるみたいやな。と1人恥ずかしくなりそのまま立つことにした。

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