メトロノームの沈黙

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外へ出ると雨に打たれているてつやが居た。


「わ、やっと来た。バカ遅いやん。」

「なんで…」

「会いたかった。」


悲しそうに言うてつやから目が離せなかった。あんな連絡してきて、きっとてつやは優しいから随分と前から待っていたに違いない。何時間前から待ってた、なんて言わずにただ会いたかったとだけ言って一歩、二歩と近づいて来る。


「返事、なんで返してくれんの」

「家に着いたら、返そうかと…思って…」

「まじか。ならいいけど。」


必要以上に話さないのは、愛か、後ろ髪を引かれる後悔か。何て言えばいいかわからず喉に何かが引っかかている、そんな感覚だった。


「みゆ、帰ろう」




「ごめんてつや、わたし達、別れた方がいい」


自分でも驚くぐらいにすんなりと出て来た別れの言葉はどんな鎖よりも重く硬く、わたしの汚い心を縛り付けた。まるでもう一度蓋をするかの様に。てつやの優しさが苦しかった。何も言わずに手を差し伸べて帰ろうと言われたことが悲しかった。何もしてあげられてないのに、いつもわたしばかり優しくされてる。申し訳ない反面逃げ出したかったのかもしれない。もう一度、ただただ想うだけの毎日の方が苦しくならない気がしてならなかった。ごめんねてつや、ごめんなさい。本当は貴方のことが好きで仕方がないの。今すぐにでもその手を取ってごめんねと謝って雨に濡れながら二人で笑いあいたい。抱き締めて愛を確かめたい。そんな資格、わたしにはこれっぽちもないのよ。

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